2012年9月27日木曜日

MBCセミナー2-2 細胞の化学組成

担当:伊藤
参加者:9名
節の概要:原子、分子の説明から入り、細胞内の化学物質組成の多くを占める脂質、DNA,RNA,タンパク質、多糖などの巨大分子の性質が述べられている。

議論した点:

糖の酵素はできるのか

酵素として働くには立体構造をとる必要がある
分子が大きいため、自由度が低そう
極性部分が多いため、疎水性部分が内側に集まるなどの力が働かない
RNAなどのように相補性がないため立体構造を作りづらい

・エネルギーを蓄えるときの糖と脂肪の違い

どちらも最終的にATPを経由する→ミトコンドリアと関わってくる
糖は効率悪いが、利用しやすい。神経では糖を利用
脂肪は使いにくいが効率が良い
糖は4kcal/g、脂肪は9kcal/g

・保留(次回の内容)
糖と脂肪の代謝経路の違い
ミトコンドリアにおいて糖と脂肪がどのように使われているか


他の議論点:

脂肪酸の炭化水素鎖の長さ
原子間の引力・斥力とは何か
立体構造が唯一に決まる理由
ATPはなぜ多く使われているのか
H,C,N,Oが使われる理由


感想:

糖の酵素はできるのかという議論によって、糖とタンパク質、RNAとの違いについての理解が深まった。次回への保留点があるので注目して読み進めていきたい。

MBCセミナー1-2 ゲノムの多様性と生物の系統樹

投稿者:城田松之


このセクションでは生物の多様性と生物間の類縁関係について述べられています.


議論した点 

 

・遺伝子の水平伝播はどのような時に起こる


生物の多様性をもたらす要因として新規遺伝子の創出があります.これは主に古い遺伝子の変異,重複,相同組み換えによって起こりますが,水平伝播によって起こるものもあります.この水平伝播がどのような状況でおこりやすいのかを皆で考察しました.

ゲノムは守らなければならない
細胞とDNAを混ぜるだけでも形質転換(病原性の伝播)がおきるので,比較的容易に水平伝播するのではないか
ではご飯を食べるだけでも伝播するのか?死んでいれば大丈夫?
原核生物は起こりやすいので,核がないということが重要なのでは.
生命誕生の時にはもっと防御システムが弱かった.

細胞内ではDNAseが存在して外来のDNAを分解している.
自分のDNAが分解されないようにDNAメチル化などの制限修飾系をもちいて防御している.

有性生殖も水平遺伝なのか


・原核生物の形と環境

丸いものが自然に見える.細長いものやらせん状のものはどのようにしてそのような形になっているのか
関連しそうな因子
 栄養・表面積・流れ
細胞の形は細胞壁や細胞骨格によって形成されている.
表面の分子,脂質などによっても形は決まる
丸いものは動かなくてもよいのか
短い繊毛があって動くことができるものもいる
受動的に生きていればよいものは丸くて能動的に運動しなければならないものは細長かったりらせん形をするのではないか

その他挙げられた疑問点

・自由エネルギーとは何か?

・ゲノムサイズと遺伝子数の関係は

・深海の生物はどうやって生きているのか

・細菌と古細菌の違い

・ウイルス由来の塩基配列がどうやって伝わるか

・最初は無機栄養生物と光栄養生物のどちらから始まったのか

・なぜ生物のドメインは3つなのか

 

感想


生物がどのようにして今のような形態に進化してきたかというのは生物学の大きな謎のひとつです.遺伝子の水平伝播は生物が多様性を獲得するためのメカニズムの一つですが,どのような場合にそれが許されたり許されなかったりするのかということは難しい問題だと思いました.また,生物の形については,必ずしも遺伝子だけで決まるわけではなく,細胞を構成する膜やタンパク質などの物性にもよると考えられるので,物理化学の領域の検討事項であるようにも思います.

2012年9月20日木曜日

MBCセミナー 1-1: 地球上の細胞が共有する特徴

「細胞の分子生物学」(第五版)を用いて議論するセミナーを始めました. 各節のまとめをラボブログに載せていきたいと思います.

担当:大林武
参加者: 9名
節の概要: 生命共通の仕組み.特に,自己複製を実現するための物理的実体としてのDNA,ならびにDNA→RNA→タンパク質の情報の流れを示す.

議論1 DNA→RNA→タンパク質の情報伝達系の始まり


・(RNA説)RNAウイルスの存在はRNAから始まったことを示唆する.
・(タンパク質説)ヌクレオチドよりもアミノ酸の方が構造が単純.
 ・初期の地球環境を模した研究では,いくつかのアミノ酸が自然合成されていた.
・(RNA説)ヌクレオチドを構成する,プリン,ピリミジン,リボースは環構造を持つ.環構造は自由度が小さくなり,また分解されにくいので,他の物質との相互作用が起きやすい.
・(RNA説)炭化水素鎖は膜脂質にも使われており,利用しやすいものかもしれない.そうであれば,リボースは直ぐに作成できそう.

議論2 アミノ酸はなぜ20種類か?


・もし一種類しかなければ,長さでしか情報を表現できない.最低限2種類は必要.
・疎水性アミノ酸は性質の違いが小さく,無くても大丈夫そう.
・最低限なくては困るアミノ酸は数種類しかない
 ・疎水性アミノ酸の何か
 ・親水性アミノ酸
 ・架橋するためのシステイン
 ・酸性アミノ酸,塩基性アミノ酸:荷電性物質の選択に必要(イオンやリガンド).

・コドンとの関連
 ・アミノ酸が16種類ならば2塩基コドンで良く,ゲノム配列の節約になる.
 ・3塩基コドンならば,最大64種類使うことも可能だが,生合成コストによる制約によって20種類になっている.

議論3 アミノ酸の供給源


・動物はタンパク質を経口摂取
 ・アミノ酸は何回でも再利用が可能(劣化しない)
・細菌や植物は外部タンパク質を大量摂取できないので,自前で合成.

議論4 DNAの塩基はなぜ4種類か


・2文字ならば,長いゲノムが必要
・偶数文字でないと,相補対を作れない
 ・自分同士で相補対が作れると,奇数文字でも大丈夫.
・AT(2)とGC(3)と異なる2重結合数ペアになっている.
 ・塩基の構造を考慮すると,2重結合の数が異なる方がミスが少ない.
 ・2種類の結合強度が存在することで,ゲノムの大局的な強度変化を作ることができる.

他の議論点


・mRNAの構造(tRNA, rRNAとの比較)
・DNAは何故2本鎖
・チミンとウラシルを使い分ける理由
・遺伝子と発現調節部位の位置関係

感想


現存する生命体のシステムがどの程度必然であったのかが面白いと思っています.全く同じ原始地球環境を用意したら,全く同じシステムができるのか.重力・光・水などの条件が異なるとどうなるのか.