2016年4月27日水曜日

細胞の分子生物学 第5章 DNAの複製,修復,組換え 第1~6節

担当:栗本
参加者:10名


概要:
① DNA塩基配列の維持
 種の長期的な存続のために変異は大切であるが、個体の生存には遺伝子の安定性が重要である。どの生物でも1回のDNA複製につき10の9乗塩基あたり約1個の塩基が変化する程度の変異率である。
② DNA複製機構
 DNA複製は、元のDNA二本鎖それぞれが鋳型となって形成され、5'→3'方向のみに起こることで効率的に行われる。この最初の塩基形成だけでなく、いくつかの校正機構が働くことで低い変異率を維持できる。また、複製に関わるタンパク質が統制のとれた大きな酵素複合体として複製を進めることもDNAの高速度複製の秘密である。
③ DNA複製の開始と完了
 DNA合成は複製起点から始まる。真核生物では複製起点が数十個まとまって活性され、特定の時期にのみ複製が行われる。また、テロメアによって末端複製の問題を解決している。
④ DNA修復
 DNAは二本鎖なので修復は容易であり、多くは塩基除去修復とヌクレオチド除去修復で修復される。多くの細胞は細胞周期に遅れを生じさせて修復を確実に完了させる機能を持っている。
⑤ 相同組換え
 相同組換えの特徴は二つのDNAが広範囲にわたって相同な塩基配列を持つ場合にしか起こらない点である。減数分裂では、一本鎖が相手のDNA二本鎖へと侵入し、四本鎖構造が形成された後、中間体が解離して組換え反応が行われる。
⑥ 転移と保存型部位特異的組換え
 この二つは相同性のあるDNA領域を必要としない。転移によって移動する遺伝因子(トランスポゾン)には三種類あり、生物によって主要な種類が異なる。保存型部位特異的組換え酵素では、遺伝子の発現制御を行うことができる。

議題:ベストな変異率とは

変異率が高くなったら?
利点→多様性の向上、進化の加速
欠点→失敗作の増加、退化の可能性
変異率を決める要因は?
環境の変化→選択圧に関係
DNAのシステム→遺伝子は変化しないほうが安定
生物による違いは?
単細胞→変異率は高くてもよさそう
生殖細胞→複製を繰り返すたびに少しの変異率の上昇が大幅な変異につながる

まとめ:
 DNAは進化の多様性としては変異が重要になるが、変異の大幅な増加はがんなどの病気のリスクが高くなる。変異率は環境の変化により変わってくるのではないかと考えられ、変化する必要がない場合は進化の過程において不合理なため、変異率が低い方が有利である。複製における変異率は生物種間において差はないが、外部からの影響による変異では差が出るかもしれない。

2016年4月19日火曜日

細胞の分子生物学 3章 タンパク質 第1~2節

担当:天満
参加者:9名


概要:
[1. タンパク質の形と構造]
・細胞は主に水とタンパク質でできている.従って,生命の体ことを知るためにはタンパク質に対する理解が必要.
・タンパク質は20種類のL-アミノ酸でできており,様々な3次元立体構造を持っている.
・タンパク質はあまりに膨大なので,ヒトゲノムが指令する複雑なタンパク質群の多くはまだ解明されていない.
[2. タンパク質の機能]
・タンパク質が特定の分子に結合し,それが活性になる仕組み
・タンパク質は触媒,シグナル受容体,スイッチ,モーター,小型ポンプとして機能する
・タンパク質の分子表面のコンホメーションがその分子の化学的性質を決める
・酵素の触媒活性について


議題:
全てのタンパク質は機能を持つか?
(無用なタンパク質は存在しないのか?)

■タンパク質の機能
・酵素(触媒として生化学反応を起こす)
・貯蔵・運搬(ex.ヘモグロビン)
・足場タンパク質(ex.細胞壁)

無用とは?→恩恵をもたらさないという視点

■生命にとって不都合なタンパク質
・ウイルス
・毒
・プリオン(ex.狂牛病)
・タウ(ex.アルツハイマー)
(・ガン細胞)

■あまり影響を及ぼさないタンパク質
・昔,ウイルスに侵された細胞が大した影響力を持たないためまだ残っているという,ウイルス起源のタンパク質
・とても短いタンパク質
・生まれたて(進化前)のタンパク質


まとめ:
 議題が決まった時点で,無用なタンパク質など存在しないという結論に向かうのかと予想していたが,議論が進むにつれ,タンパク質の機能とは何か,無用であるとはどう定義するか,など根本から再確認させられるようななかなか興味深い議論となった.結論としては,ほとんど体に影響を及ぼしていないという観点で,「無用な」タンパク質も存在しているという考えに落ち着いた.


細胞の分子生物学 第4章 DNA,染色体,ゲノム第1~5節

細胞の分子生物学 第4章  DNA,染色体,ゲノム第1~5節

担当:田河
参加者:10名

概要:

1.DNAの構造と機能
DNAとは...
  • 4 種類のヌクレオチドからなる2 本の長いポリヌクレオチド鎖でできている
  • 塩基はアデニン、シトシン 、グアニン、 チミンの4種類
  • 人の遺伝子は24000種類のタン パク情報を担っている
2.染色体DNAとそのクロマチン繊維への詰め込み
長いDNAをどのように格納しているか→染色体、クロマチン
殆どの真核生物にはジャンクDNAが存在
ヒトのゲノムの長さは比較的短い→1遺伝子あたりの塩基数は大きい


3.クロマチン構造の調節
蛋白構造を受け継ぐ→クロマチン構造→遺伝子発現をコントロール

4.染色体の全体構造
標準的なヒト染色体は直径が30 nm の繊維だが長さは0. 1 cm もある。

5.ゲノム進化の仕組み
突然変異に選択圧がかかることで進化が進む
変異の主な例 : SNP


議題:ヒトは特別な存在か?

特別と言えそうなもの
  • 知性
  • 精神→動物でも鬱になる
  • 手を使う
  • 笑う→霊長類で笑う生物あり
  • 自殺→先見性がないと自殺しようとは思わない→知性に近いか
  • 自他の区別→カラスや霊長類は可能か
人間らしい知性とは
  • 言語、文字(後世に何かを伝えるツール)、芸術
  • 感情移入→ゾウやサルは仲間が死んだ時に悲しむしぐさを見せる

まとめ
特別と言えそうな要素はいろいろ上がったが、実は他の動物でも同じような要素を持ったものが案外存在し、それを考慮すると人間だけが特別かは断定できない
しかしながら自殺においてはそれに類する行動を行う動物は議論中には存在を確認できず、これは自殺を考えるために必要な先見性が他の動物に 存在しないからであると考えられ、他の動物と一線を画す要素の可能性がある

 

 

2016年4月13日水曜日

細胞の分子生物学 第1章 細胞の化学と生合成 第1~3節

担当:佐藤(広)

参加者:10名


概要:

[1. 細胞の化学組成]

・細胞内の主な少有機分子は糖, 脂肪酸, アミノ酸, ヌクレオチドの4種類である

[2. 細胞の行う触媒反応とエネルギー利用]

・生命活動を行うには熱力学第二法則に反して生体内の秩序を保つ必要がある

・そのためには外部からエネルギーを獲得して自然には起こりにくい反応を起こす必要がる

・自然には起こりにくい反応を起こすには起こりやすい反応と共役させる.

[3. 食物からのエネルギー獲得]
・酸素がある場合のエネルギー獲得の経路は解糖系→クエン酸回路→酸化的リン酸化である


議題:

"食べる"ということはエネルギー獲得のために本当に有用か


■食べる以外のエネルギー獲得手段

・点滴 → 細菌, 常用は技術的に難しい

・光合成 → 服が着れない, 天気に依存する

・NOX, SOX → 環境が限られる


■食べるということには他の成分を同時に得られるというメリットがある


■食べる, 点滴は酸素呼吸, NOX,SOXは嫌気呼吸と分類できる


■酸素呼吸に限れば食べる以外の有用な手段が思いつかない

■光合成とハイブリットという可能性は考えられる


まとめ:

 食べる以外のエネルギー獲得手段について考察を試みたが, 今のところ食べるを上回る手段は思いつかなった. しかし, 食べる以外の手段とハイブリットでエネルギー獲得を行うという可能性は考えられる.

2016年4月12日火曜日

細胞の分子生物学 第1章 細胞とゲノム 第1~3節

担当:大林
参加者:10名

<概要>

  1. 地球上の細胞が共有する特徴は、セントラルドグマに基づく形質が遺伝するシステムであり、遺伝情報の複製、発現システムに加えて、細胞境界を規定する細胞膜が存在する。
  2. 生物は生化学的に多様であり、有機栄養生物、光栄養生物、無機栄養生物が存在する。それらは遺伝子、並びにその総体であるゲノムの進化という軸で理解することができる。
  3. 原核生物が、単純化すると遺伝情報と膜から構成されているのに対して、真核生物は多くの細胞ない区画からなる。これは原始真核生物が食作用を持つと仮定とよく合致する。多様な真核生物を理解する上で、幾つかのモデル生物が主たる研究対象となってきた。

<議題>

DNA/RNAはなぜ4種類なのか?

塩基の種類数と特徴:

  • 1: 長さしか情報を持てない
  • 2: 1bit / position → 5塩基コドン → 32通り
  • 3/5/7/..: 奇数種類の塩基は単純な規則で相補性を実現できない。
  • 4: 2bit / position → 3塩基コドン → 64通り
  • 6: 3bit / position → 2塩基コドン → 64通り
  • 20: 10bit / position → 1塩基コドン → 20通り

塩基数の大域的特徴:

  • 種類が多いと、ゲノムが短くて良い
  • 種類が多すぎると、合成が大変。(アミノ酸は20種類なのでどこまで不利かは不明)
  • 種類が多くても、遺伝暗号の冗長性を利用した変異頑健性がある方が有利。
  • 長塩基コドンになると、コドンとアンチコドンの水素結合に基づく安定性が上昇し、完全マッチでなくても結合する可能性や、結合したものが乖離しにくいといった欠点がある。最適結合強度は生育温度に依存し、長塩基コドンは高熱環境で有利になる可能性がある。
  • 塩基が2種類では、相補鎖間の水素結合数が常に等しいので、GC含量に基づく巨視的なレベルでの制御ができない。塩基が4種類以上で可能になる。

まとめ:
なぜ4種類が選択されたかは断定できないが、対応塩基間の安定性は水素結合の数に依存するという物理化学的な制約のため、ある環境での最適な水素結合数が存在し、それが4種類であることと矛盾しないと推定される。