2018年7月24日火曜日

細胞の分子生物学 第7章「遺伝子発現の調節」 6,7節

担当:新田
参加者:8名

概要
 細胞は遺伝子の発現を調節するため、RNAからタンパク質に至る経路の色々な段階を制御している。これらの調節段階の大半には調節を受けるRNA分子内の特異的塩基配列または構造の識別が必要であり、それを担うのは調節タンパクまたは調節RNA分子である。
 よく解明された非翻訳RNAの使用例として、短い一本鎖RNAがガイド役として働き、細胞内の他のRNAを塩基対形成によって選択的に識別して結合するRNA干渉がある。RNA干渉はmRNAの分解または翻訳抑制を引き起こし、また、特定の遺伝子群をヘテロクロマチンに凝縮させることでその転写を抑制することもある。

議論点
様々な段階で調整を行う利点

・遺伝子発現の調節段階には以下の6つがある
①転写調節 ②RNAプロセシングの調節 ③RNA輸送と局在化の調節 ④翻訳調節 ⑤mRNA分解の調節 ⑥タンパク質の活性調節

・上記は真核生物の場合であり、原核生物では①と⑥のみ(④も多少はあるかも)

利点
・保留にできる(量の微調整が効きやすい)
・時短になる(?) → 質が下がるのでは?
・調節対象による適、不適への対応(ただし、①⑥のみでは×)
・環境への適応力が上がる(③〜⑥:核外での調節)
 →核外という「より近い場所」で刺激を受け取ることができる
  →核内外の出入りのコストの問題は?(一応通れることは通れる)
・バリエーションを増やす(②)
 →各々に対応する遺伝子を持っていればいいのでは?
・mRNAの方が運搬が楽(③)
・mRNAの状態で貯めておくことが、一部の細胞では大切(④)

(欠点?:構造が複雑になる)

まとめ
 大部分の遺伝子では転写調節が最も重要であるが、それに加えてタンパク質の活性調節も重要であるということが、原核生物の調節機構からも理解できる。その間にある複数の調節段階は、基本的には「効率化」、つまり「応答速度を早くする」ということが主要な利点として挙げられるのではないだろうか。

2018年7月18日水曜日

細胞の分子生物学 第7章 「遺伝子発現の調節」 4,5節

担当:相澤
参加者:7名

概要


動植物の様々な細胞は、細胞の型ごとに異なる遺伝子セットを転写する仕組みで主に作り出されている。高等な真核生物では各型の細胞に特定の転写調節因子セットが存在し、その細胞型に適した遺伝子群のみが確実に発言するようになっている。また、専門化した動物細胞は細胞分裂を繰り返しても、また培養増殖下でも固有の性質が維持できる。よって遺伝子調節機構は安定で分裂後も受け継がれる。転写調節因子が自ら永続的に合成できるような直接または間接的な正のフィードバックループは細胞の記憶の最も単純な機構になっている。真核細胞での遺伝子発言記憶パターンを細胞に記憶させるために、受け継がれる形のDNAメチル化やクロマチン凝縮状態を付加機構として使っている。DNAのメチル化はゲノムの刷り込みとも関係している。

議題「ゲノム刷り込みを阻止することでゲノム刷り込み由来の病気の発症を防ぐことはできるのか」

病気の発症の原因は活性を持つ遺伝子が変異、かつゲノムの刷り込みが同時に起こることにある。そのためゲノムの刷り込みを阻止すれば発症は抑えられる。
ゲノムの刷り込みをなくすためには、まずゲノムの刷り込みの存在理由を知る必要がある。存在理由としては議題では二つの説が上がった。

一つは無為生殖を無くすためという説である。ゲノムの刷り込みがなければ必ず両親の遺伝子が必要であり、無為生殖がなくなることで種の多様性を保つことができる。しかし無為生殖は高等な生物の一部で度々起こることが確認されていることであり、無為生殖が生物全般で防ぎたいことであるなら、ゲノムの刷り込みが有胎哺乳類のみで起こることと矛盾している。

もう一つは、大きな子供を残したい雄と大きな子供を残したくないメスの妥協点であるという説である。ゲノムの刷り込みの多くは胎児の成長に関与するで起こり、雄由来の遺伝子で胎盤の形成の決定をしメス由来の遺伝子で子供のサイズを決定する。これは雄としては自分の遺伝子を残したいために子供ができるかどうかを決定させ、雌は自分の身の安全の上で子孫を残したいため子供のサイズを決めていると考えると辻褄が合う。
また胎児目線だと自分の体の大きさを決める上で母体の遺伝子の基づいた体のサイズ決定をすることが最適解と考えられる。これは有袋哺乳類だけで起こることとも矛盾がないが、胎盤の形成の関与する遺伝子が雄由来であることの理由が弱い。

まとめ

議題の結論としては、ゲノムの刷り込みを阻止すれば、病気の発症を防ぐことは可能である。しかし刷り込みを阻止することを考えたときに、ゲノム刷り込みの存在理由が曖昧であり阻止して良いとは言い切れない。したがって発症を無くす第一歩として存在理由を明らかにすることが必要である。

2018年7月13日金曜日

細胞の分子生物学 第7章 「遺伝子発現の調節」 1,2,3節

担当:矢後
参加者:7名

概要

様々な細胞の違いは発現している遺伝子の違いであり、細胞が発生する過程でこの発現する遺伝子の調節が行われている。この調節で最も重要なのはRNA転写の段階である。転写調節因子がDNAの特定のシス調節配列を認識することで、どの遺伝子を発現するかどうか(オンorオフ)を決めるのである。その仕組みとしては、調節因子がシス調節配列に結合すると、状況によってその遺伝子にRNAポリメラーゼが結合できないようにして、RNAの転写が行われないようにしてしまうのである。

議題

細胞がDNAを変化させずに分化する理由
言い換えると、なぜ細胞ごとに異なるDNAを持つようにはならなかったのか

メリット、デメリットとして上げられた意見

メリット

・DNAを変化させないほうが遺伝が容易いのではないか。
(これについては、生殖細胞だけが全情報を保持すれば良いのではないか、という意見も出ている)

・ヒトデ、プラナリア、またはiPS細胞の例ように、細胞分化によってあらゆる細胞になることができる仕組みが成り立つ。

・環境適応(環境によって遺伝子発現の調節を変えること)が可能になる。

デメリット

・1つの細胞に全ゲノム情報があると、サイズの無駄になるのではないか

ゲノムを再編成するにしても、結局はそのための機能が必要なのではないか

初めは「遺伝子発現を調節」 vs 「細胞ごとにゲノムを再編成」の議論かに思われたが、結局は後者も、細胞ごとに決まったゲノムを再編成するためには調節の機能が必要なのではないか、という意見が出た。

免疫細胞は実際にゲノムを再編成する

免疫細胞の中には、ゲノムを再編成するものも存在する。
それぞれの細胞が限られた対象(抗原など)に反応するように、つまり機能を特化させる目的で、ゲノムから余計な部分を削るのである。

まとめ

細胞分化の過程でゲノムを再編成するのは、再編成の調節機能も必要になるため、免疫細胞のような一部を除いては無駄なのかもしれない。
唯一のデメリットとして挙げられた「1つの細胞に全ゲノム情報があると、サイズの無駄になるのではないか」という問題については、実際にどれほどのサイズが必要なのか考える必要があるだろう。