2019年11月19日火曜日

細胞の分子生物学 9章 細胞の可視化

担当:辻本

参加者:6名

[概要]
 細胞の機能を知る上で、その構造を知ることは不可欠である。肉眼では観察できないような構造を光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いることで可視化することができる。光学顕微鏡では、蛍光タンパクなどを用いて細胞内の動態の観察を行うことができ、電子顕微鏡を用いれば、より高分解能の実現が可能となる。


[議論点]
細胞のダイナミクスを高解像度でとらえるために何が必要か

 ここでは、細胞のダイナミクスをとらえることをタンパク質の輸送や分子の動きなど、5nmほどのものを観察することと定義した。

 電子顕微鏡では、高分解能を実現できるが、電子を用いるため真空中でなければ利用できず、様々な試料の調整が必要となる。これでは生きた細胞内の動態を細かく観察することはできない。それに対し、光学顕微鏡では、電子顕微鏡のような高分解能を実現することはできない。

 まずはじめに、光学顕微鏡と電子顕微鏡のメリットとデメリットについて議論した。

[光学顕微鏡]
・調節の幅が広い。(拡大率が広い)
・生きている状態の観察が可能。
・色々な標識を行うことができる。
・分解能が電子顕微鏡に比べて低い。
・発光タンパクが大きい。

[電子顕微鏡]
・分解能が高い。
・真空中でないと電子を利用することができない。→生きた状態の維持ができない。
・標識しづらい。

 ここから、これらの顕微鏡の改良方法について議論した。

[光学顕微鏡]
・波長を短くして分解能を上げる。→波長が短くなるとエネルギーが大きくなるため、分子の損傷や大規模な移動が生じてしまう。
・発光タンパクを小さくしたり、発光方向をレーザー分子のようなものを用いたり、他方向の光を制御したりして、一方向に定めることで、分子の向いている方向や回転の状態などを読み取る。
・AFMを用いれば作った基盤上でタンパク質の動きを追うことが可能。

[電子顕微鏡]
・時系列に沿った複数の試料を用いたり、瞬間冷凍や瞬間解凍技術を使用して、ダイナミクスを実現する。

 他にも細胞シミュレーションを用いれば、分子レベルでダイナミクスをシミュレーションすることが可能である。その上で、顕微鏡技術とシミュレーション技術のギャップを両方向から埋めることが重要である。

[まとめ]
 細胞のダイナミクスをとらえるために、光学顕微鏡では、蛍光タンパクの方向性や大きさを小さくするというような改良方法が挙げられる。電子顕微鏡では、試料の扱い方の見直しを図ることで細胞のダイナミクスの観察が実現可能であると考えられる。また、より精度の高い観察を行うために、顕微鏡技術とシミュレーション技術の改良を双方向から行う必要がある。

2019年11月12日火曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞,分子,生体システムを解析する 6節,9章 細胞の可視化(一部)

担当:川上
参加者:7名

[概要]
 細胞機能の定量化のために数学的な解析が必要である.タンパク質などの濃度に関する微分方程式の解析により継時変化や細胞機能の頑健性などを導出することができる.確率論的なモデルや統計的解析も重要である.
 細胞を光学顕微鏡で観察する際には顕微鏡法の選択や蛍光色素などでの標識が重要である.

[議論点]
組織などの大きな構造は数学的に記述可能か,またエージェントベースモデルを用いるとどのような有益な情報が得られるか

 教科書にあるように,細胞中のタンパク質の濃度のような小さいスケールのものはモデル化できるが,より大きな組織についてモデル化できるかという疑問から,心臓を例に組織のモデル化について検討した.また,数学的な記述の手法としてエージェントベースモデルは他の表し方と比べてどのような点が有用なのかという点について検討した.

 心臓をモデル化する場合,他の器官(脳など)や外的要因(酸素濃度,機構など)について考慮するか,または心臓を構成する細胞の仕組みに還元してモデル化するかといったことに関して議論した.

 心臓の脈拍についてモデル化することを考える場合,外的要因が脈拍にどのように影響するか,その要因を変数とした関数を求めることで脈拍をモデル化できると考えた.そのような関数は漸化式や一般式により表されるが,一般式を求めることは困難であることも多く,また内部のメカニズムについて考察するためには解析可能な式の形にする必要がある.しかしそれでも外的要因の影響を正しく捉えられていれば,End-to-Endな予測が可能で有益な場合もある.

 また,脈拍を心臓の細胞の仕組みに還元してモデル化する場合,エージェントベースモデルの利用が考えられる.エージェントベースモデルにおいては,観察結果に合う振る舞いを得るために一つ下の階層のエージェントについてモデル化する(例えば心臓の振る舞い(脈など)を生み出すための細胞(群)のモデル化).下層の仕組みをモデル化することで上層の振る舞いが再現できた場合,それは下層のモデルが正しいことを支持する.このようにエージェントモデルは構成論的にモデルを構築するため,上層で発生する現象が下層のどのような性質に基づくのか,メカニズムについて考察することができる.

 これらを比較すると,変数同士の関係式を求める手法では,内部に複雑なメカニズムを有していても最終的には何らかのパターンに収斂していくような現象についてはEnd-to-Endなモデル化が可能である.しかしそのモデルの解釈性はモデルの立て方に依存している部分もある.エージェントベースのモデル化ではエージェントの設定の仕方によりメカニズムについての考察が可能である.ただしエージェントと集団の関係が何層にも階層化するとそれらを総合した結果は複雑となりうる.

[まとめ]
 組織などの大きな構造をモデル化する場合は何に着目してモデル化するかが重要であり,適切な要因に着目すればモデル化は可能である.エージェントベースモデルを用いると階層的な構造からなる現象についてメカニズムを考察することが可能である.

2019年11月5日火曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞, 分子, 生体システムを解析する 4~5節

担当:永井
参加者:7名

[概要]
 制限酵素による特定部位のDNA切断や、DNAのクローニング、DNA配列の解読などをはじめとするDNAの解析と操作の種々の手法、組換えDNA技術ができたことで、逆遺伝学が生まれた。
 変異体から遺伝型を同定する古典遺伝学とは異なり、逆遺伝学は遺伝子から変異体を探る手法である。

[議論点]
多遺伝子性疾患でもタンパク質の機能がすべて分かれば、原因を特定・予測することは可能か。可能でないとすると何が必要か。

[定義・前提]
・環境要因はなるべく切り離し、遺伝要因で考える
・原因の特定は、どの遺伝子かの同定とする

[タンパク質の機能]
・相互作用、ネットワーク
・ダイナミクス
・どの分子に作用するか
・タンパク質の状態遷移  など

[具体例]
多遺伝子性疾患 = 糖尿病
症状 = 尿の量が増える

細胞→組織→器官→個体、と同じような具合で最下層を「タンパク質の機能」に、最上層を「多遺伝子性疾患の症状」としてボトムアップで考えていくと、設定したようなタンパク質の機能のみでは、例えば器官ごとの異なる遺伝子発現機構の情報は得られなそう

[まとめ]
 多遺伝子性疾患は複数の要因が複数のレイヤーで連なって発生すると考えられ、タンパク質の機能のみから多遺伝子性疾患の症状を特定するのは難しそう。

2019年11月4日月曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞, 分子, 生体システムを解析する 1~3節

担当:菅野
参加者:7名

[概要]
 生体機能の解明には生化学的解析が必要で、そのために細胞を単離・培養する。多くの動物細胞は老化によって一定回数分裂すると死ぬため不死化する必要がある。こうして得られたものから超遠心機やクロマトグラフィーなどを用いて目的のタンパク質を抽出する。質量分析法や平衡結合実験、X線結晶解析や核磁気共鳴分光法などを用いてその性質や構造を決定できる。

[議論点]
不死化細胞と正常細胞からわかることの違いは何か。

[議論での定義]
 ここで言う不死化細胞は不死化した細胞を指すことにする。そのため形質転換細胞株なども含めた形で議論されている。

[不死化細胞と正常細胞の違い]
不死化細胞と正常細胞を比較して議論した。

・増殖能力(分裂し続けられる能力):条件次第で無限 ⇔ 老化による有限
・テロメアの長さ:なくならない ⇔ なくなる
・変異量:多い ⇔ 少ない
・表面の形質:不死化細胞は接着しにくく、他細胞と接着してなくても殖えられる。

[わかることの違い]
ここでは不死化細胞の視点で議論した。

 < 増殖能力やテロメアの長さ(老化の有無)による違いから >
・細胞老化の研究はしにくい(老化による時間的スケールが消失しているため)
 →ある世代(時間)を固定して殖やすことができれば可能か
・正常細胞とは分裂の性質が変わる可能性がある

 < 表面の形質の違いから >
・細胞同士のコミュニケーションに対して研究は難しい

[まとめ]
 不死化した細胞は老化という時間的スケールを失うことで無限に増殖可能だが、それによって老化による影響を調べることは難しいだろう。また表面の形質が変わることで、細胞間のコミュニケーションも研究が難しいと考えられる。