2019年11月12日火曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞,分子,生体システムを解析する 6節,9章 細胞の可視化(一部)

担当:川上
参加者:7名

[概要]
 細胞機能の定量化のために数学的な解析が必要である.タンパク質などの濃度に関する微分方程式の解析により継時変化や細胞機能の頑健性などを導出することができる.確率論的なモデルや統計的解析も重要である.
 細胞を光学顕微鏡で観察する際には顕微鏡法の選択や蛍光色素などでの標識が重要である.

[議論点]
組織などの大きな構造は数学的に記述可能か,またエージェントベースモデルを用いるとどのような有益な情報が得られるか

 教科書にあるように,細胞中のタンパク質の濃度のような小さいスケールのものはモデル化できるが,より大きな組織についてモデル化できるかという疑問から,心臓を例に組織のモデル化について検討した.また,数学的な記述の手法としてエージェントベースモデルは他の表し方と比べてどのような点が有用なのかという点について検討した.

 心臓をモデル化する場合,他の器官(脳など)や外的要因(酸素濃度,機構など)について考慮するか,または心臓を構成する細胞の仕組みに還元してモデル化するかといったことに関して議論した.

 心臓の脈拍についてモデル化することを考える場合,外的要因が脈拍にどのように影響するか,その要因を変数とした関数を求めることで脈拍をモデル化できると考えた.そのような関数は漸化式や一般式により表されるが,一般式を求めることは困難であることも多く,また内部のメカニズムについて考察するためには解析可能な式の形にする必要がある.しかしそれでも外的要因の影響を正しく捉えられていれば,End-to-Endな予測が可能で有益な場合もある.

 また,脈拍を心臓の細胞の仕組みに還元してモデル化する場合,エージェントベースモデルの利用が考えられる.エージェントベースモデルにおいては,観察結果に合う振る舞いを得るために一つ下の階層のエージェントについてモデル化する(例えば心臓の振る舞い(脈など)を生み出すための細胞(群)のモデル化).下層の仕組みをモデル化することで上層の振る舞いが再現できた場合,それは下層のモデルが正しいことを支持する.このようにエージェントモデルは構成論的にモデルを構築するため,上層で発生する現象が下層のどのような性質に基づくのか,メカニズムについて考察することができる.

 これらを比較すると,変数同士の関係式を求める手法では,内部に複雑なメカニズムを有していても最終的には何らかのパターンに収斂していくような現象についてはEnd-to-Endなモデル化が可能である.しかしそのモデルの解釈性はモデルの立て方に依存している部分もある.エージェントベースのモデル化ではエージェントの設定の仕方によりメカニズムについての考察が可能である.ただしエージェントと集団の関係が何層にも階層化するとそれらを総合した結果は複雑となりうる.

[まとめ]
 組織などの大きな構造をモデル化する場合は何に着目してモデル化するかが重要であり,適切な要因に着目すればモデル化は可能である.エージェントベースモデルを用いると階層的な構造からなる現象についてメカニズムを考察することが可能である.

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