2019年9月17日火曜日

細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第4-5節

担当:辻本

参加者:7名

[概要]
 真核生物は、遺伝子発現を転写調節因子の組み合わせにより調節している。遺伝子発現パターンを細胞に記憶させるため、フィードバックループやDNAのメチル化、クロマチン凝縮状態を付加機構として使っている。

[議論点]
転写回路のモチーフによってどんな機構を持たせられるか。

THE CELLのFig.7-40のモチーフが生物内のどのような働きに利用されているかについて
・正のフィードバックループ→増えても困らないもの、ずっと作り続ける(ex.RNAポリメラーゼのように回転率に限界があるもの)
 →基本的に細胞などの状態(機能)の記憶に利用されている→アナログで簡単なため、機構のはじめなどに利用されているのではないか。
・負のフィードバックループ→体温調節などまわりの量に応じて対応するものに利用
 →0,1ではなく量的なものに対応
・フィードフォワードループ→ローパスフィルターのような作用

高次な信号処理
多細胞生物では、上記のモチーフにより記憶を可能にしている。
また、概日リズムやコウモリの超音波に認識などに利用されているのではないかと考えられる。

[まとめ]
 転写回路のモチーフは、生体内の様々な信号処理に利用され、このモチーフの組み合わせによって高次な機能をも可能にしていると考えられる。

2019年7月19日金曜日

細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第1-3節

担当:川上
参加者:6名

[概要]
 多細胞生物の多様な細胞型は同じゲノムから異なる量や質の遺伝子産物が発現することにより実現される.遺伝子産物の発現調節は主に転写の段階で行われ,転写活性化因子,転写抑制因子,クロマチン構造の変化,ゲノム修飾などにより調節される.原核生物より真核生物の方が複雑な調節を行う.

[議論点]
転写調節は活性化因子のみでは行えないのか

 転写調節の機構がなぜこのように複雑なのかという疑問から,具体的に簡略化する方法として活性化因子のみで調節を行うことが可能かという点について議論した.

 まず活性化因子が結合している場合(ONとする),抑制因子が結合している場合(OFFとする),何も結合していない場合(Neutralとする)で転写量がどれくらい変化するかを見積もった.仮にONの時を100,OFFの時を0(0.01程度)とした.

 真核生物の転写調節は活性化/抑制因子の結合によるファインチューニング的な調節以外にも細胞型を左右するクロマチン構造やメチル化による大雑把な調節がされており,Neutralにおける転写量は遺伝子により異なる.今回の議論では簡略化のためそのような大雑把な調節機構がない原核生物における調節を仮定し,Neutralにおける転写量を5程度と見積もった.

 具体例としてlacオペロンによる調節を考える.lacオペロンではグルコースが存在下で活性化因子の結合,ラクトース非存在下で抑制因子の結合が起こり,それぞれの環境で以下のような量で転写されると考えられる.

A: glc+ lac+ → 5 (Neutral)
B: glc+ lac- → 0 (OFF)
C: glc- lac+ → 100 (ON)
D: glc- lac- → 1 (ONかつOFF,Neutralよりは少ないと仮定)

一方で抑制因子による調節がなくなった場合,以下のように転写量が変化する.

A: glc+ lac+ → 5 (Neutral)
B: glc+ lac- → 5 (Neutral)
C: glc- lac+ → 100 (ON)
D: glc- lac- → 100 (ON)

最も変化が大きいのは環境Dにおいてラクトースがない環境においても転写を続けてしまうという変化であり,それにより起こりうる影響を以下に示す.

・発現したタンパク質はラクトースが存在する環境になるまでの在庫となる
・発現したタンパク質はやがて分解されてしまうため使われなければ無駄である
・グルコースが存在するようになるまで延々とタンパク質を合成するためコストがかかる

転写抑制がされなかった場合,使われなかったタンパク質が有害になるとは考えにくいが,転写翻訳のためのエネルギー消費により生存に不利になることが考えられる.抑制因子を用いて転写調節を行うためのコストと環境Dにおいて転写が抑制されないことによるコストを比較した.抑制因子は活性化因子に比べ特異性や他の分子との相互作用が少なくて済むため,活性化因子を用いることよりはコストが少ない.一方で環境Dにおいて転写が抑制されなかった場合,ただでさえエネルギー源が少ない環境でエネルギー消費が増大し,適応的とは言えない.そのためこの例については抑制因子を用いることがより多様な環境に適応する上で有利だと考えた.

[まとめ]
 以上の議論の結果,活性化因子と抑制因子の両方を用いることでより多様な環境に適応的な応答ができるため,両方を有する調節機能が発達したと考えた.

2019年7月9日火曜日

細胞の分子生物学 6章 ゲノム情報の読み取り 第2,3節

担当:永井
参加者:6名

[概要]
 RNAからタンパク質への翻訳は触媒作用を持つ分子装置、リボソームによって行われる。リボソームには大小のサブユニットがあり、小サブユニットがtRNAとmRNAのコドンを対応させ、大サブユニットがアミノ酸間にペプチド結合を形成してポリペプチド鎖を作る。
 RNA世界仮説は、かつてはRNAが遺伝情報の媒体であり、化学反応の触媒でもあったとする仮説である。


[議論点]
コドンの対応はなぜ今のようになったか

コドンへの疑問として
・割り当ての数の違い(2~6)
・トリプレットの最後のヌクレオチドは2種で良いのでは?(4x4x2)
・終止コドンはなぜ3つも割り当てられたか
などが挙げられた

それに対してコドンの割り当てが今のようになった要因として
・1文字目は大きさ、2文字目は性質を保存しているのではないか
・ややこしいものとして、終止やトリプトファンなどがまとめられているのでは?
・合成経路でまとめられているのでは?
・誤って生成されても害の少ないものに多く割り当てているのではないか?
などが挙げられた

終止シグナルについて、コドンではなく、TATAなどの配列で表す方法が考えられる
この方法ならば、偶然終止してしまうことを減らせ、フレームシフトにも耐性がある
しかし、偶然終止することが少ないのは一概に良いとは言えない
終止コドンの割り当て数を変えれば、偶然終止することのおきやすさを調整できるのではないか

終止コドンはATリッチ(100%と66%)

GCリッチの太古の生物は重要なアミノ酸をGCリッチのコドンに割り当て、余ったATリッチのコドンに終止などを割り当てたのでは?


[まとめ]
 コドンの対応が現在のものになった要因についての議論が盛んに行われた。コドンの冗長性が疑問視されたが、それらは上に挙げられた要因などで説明ができ、可変性があるという点から好ましいものだと考えられる。

2019年7月8日月曜日

細胞の分子生物学 6章 ゲノム情報の読み取り 第1節

担当:菅野

参加者:6名

[概要]
 DNAの情報は、そこからRNAというものに写し取られて利用される。この作業を転写という。これによってできたRNAはタンパク質の設計図であったり、そのまま物質として機能を持つ。
 真核生物では、DNAから写し取られたRNAにマーカーをつけて、いらない部分を取り除くスプライシングという作業を行う。この取り除き方によって、同じDNA配列部分の写しでも複数の最終産物を作ることができる。


[議論点]
スプライシングの仕方により異なるタンパク質を別々にコードするのに十分な領域があるにも関わらずなぜ別々にコードしないのか

ここでは、原核生物のようなDNAに直接タンパク質の情報を記述する場合(A)と、真核生物のようなイントロンありでRNAにし、スプライシングして利用する場合(B)を対立させて考えていく。

仮定 :
DNAの長さは現在と変わらず、使われていない部分に情報を入れていく。

(A)DNAに直接記述する
+メリット
・スプライシングに関連する情報はいらない。
・核の構造も必要でなくなり、転写と翻訳を同時にできる。
-デメリット
・新しい機能タンパク質を生み出すのが難しい。
・DNAを読む数が多くなる上、それぞれの発現調整も必要。
・1つ1つの変異がダメージになりやすい。

(B)スプライシングを利用する
+メリット
・イントロンがあるため確率的には重要なところにダメージが入りにくい。
・情報容量が大きい。
・バリエーションを比較的容易に増やせる。
・新しい機能タンパク質を生み出しやすい。
-デメリット
・1つのエキソンに変異が入るとそれを用いて作られる複数のタンパクが機能しなくなる。

そもそも少し違う新しいタンパク質を生み出すことは必要なのか。
→ほとんど同じ形だが、活性部位だけ変えたいということがあるとき有用。ただし、場合によっては生体に有害なことを引き起こすものが発生する可能性もある。


[まとめ]
 DNAに直接タンパク質の情報を記述する場合、DNAからの情報伝達が効率化できるが、それらの管理や新しいタンパク質を生成するのが難しい。一方イントロンありで記述すると、確率的にエクソンに変異は起こりにくいが、一度入ると、その部分は複数のタンパク質生成で使われているために、致命的なダメージになる。また、エキソンの組み合わせでタンパク質を記述されるために、組み合わせは変えられるため、バリエーションを増やすことができる。

2019年7月2日火曜日

細胞の分子生物学 第5章(後半) DNAの修復、組み換え

担当:近藤

参加者:6名

[概要]
 有害な変異を最小限にとどめるために、生物はDNAの修復機構をもつ。複製の間違いを正すような簡単なものから、放射線で2本のDNAが両方破損した時に修復するようなものまで多くの修復機構をもつ。
一方で、DNAの間を転移することができる因子があり、この因子の働きによって進化に必要なDNAの変化が生み出される。


[議論点]
転移によりゲノムが無駄に長くなることは有害ではないのか

[前提 1 ]
転移は、転移因子によって引き起こされるが、転移先で新たなDNAの鋳型が作られるようになるため、転移を繰り返すことでゲノムは長くなってしまう。

[前提 2 ]
今回はDNA配列の長さについて考える( 遺伝子の長さとは区別する )

DNAが長いとどうなりそうか
・(bad) 遺伝子を探すのが大変そう
・(bad) 維持コスト、複製コストが大きくなりそう
・重要ような遺伝子が変異する確率が下がる
・(good) 非コード領域で新しい機能が追加される

コストについて
コストについて考えてみると、複製コストはせいぜいnオーダでできるだろうという結論に至った。一方で、維持コストや探すコストについてはその構造がカスケードになっているとそのカスケード分(k)コストが増えてしまう。n^kとなってしまうと、明らかに時間がかかるだろうという結論に至った。

非コード領域で新しい機能が追加される について
・人間の非コード領域は99%である。
・新しい機能が追加され、有害であればその個体が死ぬ。一方で効果的であった場合は広まり集団に広まりやすい。

[まとめ]
一般化することはできないが、非コード領域を多く持つような生物種にとってゲノムが長くなることは問題ではなく、その長さがゆえに転移を許容することができる。
また、ゲノムが長くなることによってコストが莫大にかかるようになるため細胞の時間感覚が長くなると考えられ、これが寿命の長さと関係しているのではないかという考察も得ることができた。

2019年6月4日火曜日

細胞の分子生物学 第5章(前半) DNAの複製

担当:辻本
参加者:6名

[概要]
 DNAの複製により、生物は遺伝情報を伝え、その高度な秩序を保っている。この複製には、半保存的複製とその誤りを減らす校正機構があり、それによって生命にとって有害な変異を最小限にとどめている。


[議論点]
時代や環境によって変異率[占有率]は変化するのか?

変異率の定義
個体はその複製機構が議論の主題になり、集団は環境の変化が変異に影響をもたらすのではないかと考え、変異率を集団の占有率とすることにした。

進化とスピードの関係
・現在の人間は進化がゆるまりそう
・地球温暖化など人間による環境の変化が他の生物にも影響をもたらしている
・農薬により耐性のある菌のみが生き残る

変異を固定することのメリット・デメリット
メリットとして、
・種分化(競争的でなくなり、現在の環境に対して利点の多い状態のものが中心的に生息)
・最小限化(ずっと暑いなら厚手の服はいらないなどの必要なものを減らすことができる)
デメリットとして、
・環境の変化への不適応(環境が変化したら生存が困難になる)
が挙げられた。

変異率と環境の関係
・ブラックバスが日本の川に放された時、幾つかの生物は絶滅する
・人間は環境の変化を道具によって対処し、その意味では変異を固定している


[まとめ]
 環境が変化すると、強い集団が残ったりある適応性を持った種が生き延びるため、環境によって変異率は変化すると言える。

2019年5月15日水曜日

細胞の分子生物学 4章 DNA, 染色体, ゲノム

担当:川上
参加者:6名

[概要]
 遺伝情報はDNAの塩基配列として記録され、DNAはタンパク質と結合し凝集して染色体に格納される。染色体の部分構造により遺伝子の発現が制御され、この構造はエピジェネティックに継承される。ゲノムは突然変異などで多様化し、種間のゲノム比較により進化の過程や配列と機能の関連が推定される。

[議論点]
多様な性の決定方法がある中で、なぜヒトはX, Y染色体の組み合わせにより性が決定されるのか

 XXYは男性なのか、女性なのか(なぜ性の決定のためにX, Y染色体が用いられるのか)という疑問から発展し、上記のテーマに論点を絞って議論した。

性の決定方法には以下のように様々な形態がある
①成長の途中で一部の個体の性が変わる(一部の魚)
②染色体の組み合わせによって決まる(哺乳類)
③卵の周囲の温度で決まる(爬虫類など)

 これらの決定方法により異なるのは性の比であると考えた。そこで①、②の方法により生ずる性比の偏りと、偏りにより生ずる影響を挙げた。

①の場合
 メスが集団の大部分を占め、集団の一部であるオスが死ぬとメスの一部がオスに性転換する(コブダイ)例がある。この場合、

・メスが多いため、集団として産むことができる子の数は多い
・オス同士の競争による繁殖可能な個体の減少がない
・遺伝的多様性はメスの遺伝的多様性にほぼ依存
・集団として戦力が不足する?

 つまり、集団が多数の子をつくる上では合理的だが、遺伝的多様性には欠けるという影響が考えられる。
 また、魚は卵生でありメスが子宮を持たないという点でメスとオスの構造が類似しており、性転換が比較的容易なのではないかとも考えた。

②の場合
 X, Y染色体の分配により性が決まるため、性比はほぼ1:1である。この場合、

・オスとメスの組み合わせの数が多いので遺伝的多様性が高まる
・オス同士の競争により、その時々に適応した能力を持つオスが選択される
・繁殖できないオスが存在する
・メスが(①と比較して)少ないため集団として産むことができる子の数は比較的少ない

 つまり、子の遺伝的多様性は高まるが、集団がつくることのできる子の数は少なくなるという影響が考えられる。
 また、哺乳類は胎生でありメスが子宮を持つためメスとオスの構造が大きく異なり、性転換が困難である一方で、逆に構造の差を大きくすることができるのではないかとも考えた。

 このように①と②の間には遺伝的多様性と集団がつくる子の数において対称的なメリット・デメリットがあると考えられる。さらに①や②の方法をとる種には卵生、胎生による違いも存在する。

 これらから考えられる結論は以下の通りである。異なる性の決定方法はそれぞれメリット・デメリットを持ち、どのような戦略が有効かは種により異なる。関連する要因としては、性に特有の構造・役割の違い、卵生・胎生の違い、捕食されやすさの違いなどが考えられる。