2012年11月30日金曜日

MBCセミナー 6-3: RNA世界と生命の起源


担当:大林

節の概要
・次の生命進化の仮説について検証する.科学進化 → 前RNA世界 → RNA世界 → {RNA, タンパク質} 世界 → {DNA, RNA, タンパク質} 世界

議論した点
・(先)-RNA worldの論争の決着には,どのような証拠が必要か?
 ・RNA世界の誕生
  ・RNA, PNA→RNAの証明が必要
  ・実験:高濃度のヌクレオシドから,RNAができるか(もしくはRNA様物質)
  ・化学反応のシミュレーション
 ・RNA世界の観察
  ・RNAからなる生物の化石があれば良い.
   ・難しいが,化石からゲノム解析に成功した例はある(ネアンデルタール人のゲノム)
  ・地球外環境における生命誕生を観察する.大量に観察すれば,確率的に地球に置ける生命誕生も分かる.

・何がトリガーとなって,次の世界に入ったのか?
 ・競争に有利になる必要がある
 ・RNA修飾を使えば,ある程度はRNAだけでも安定性を維持することが可能.
 ・DNAは安定なので,複雑な生物の出現が可能になった.
 ・タンパク質は疎水性コアを持ち安定なので,力学的強度の高い構造を作ることができ,細胞の大型化を促進した.

他の議論点
・RNAがTNA, PNAより有利な点は何か
・RNA等はすぐに分解されないのか?
・タンパク質でないとできない反応は何か?
 ・強度が必要
・将来,non-RNA worldになる可能性はあるか?
・RNA世界→DNA世界の変革におけるストーリー

感想
進化の話は極めて面白いものの,証明は難しく,直接観察や再現実験が鍵となる.始めの生命の原型ができるまでは,単純で絶望的な試行を長い時間をかけて行ったと想像される.その試行が何億年必要なのかは確率的な問題であり,地球の場合には数十年であったと推定されるが,場合によっては太陽の寿命の方が短いこともあったかもしれない.

2012年11月29日木曜日

MBCセミナー 6-2:RNAからタンパク質へ


担当:村上
参加者9

節の概要
細胞がmRNA分子のもつ情報を正確にタンパク質分子へ変換(翻訳)する必要がり,これを精度よく行うためにtRNA合成酵素や伸長因子,様々な品質管理機構が働いていることが示されている.さらに異常なタンパク質が凝集体を形成するのを防ぐための,ユビキチン結合機構やプロテアソームによるタンパク質分解などの巧妙な仕組みがあることが示されている.

議論した点:
1. 開始コドンが1つ,終止コドンが3つあるのはなぜか
• 精度よく終止コドンを見つけるためではないか
• フレームシフト(読み枠のずれ)などにより終止コドンが読み飛ばされないためではないか
• 3つのうち1つに変異が起きても大丈夫だからではないか
• 品質管理機構の一つと考えられるのではないか
→ 各アミノ酸のコドンの数とタンパク質配列のアミノ酸の出現頻度には相関があるのか?
• AUGコドンは唯一メチオニン(M)を運ぶが,確かにメチオニンは比較的に出現頻度が少ないかも

2. 細菌のアミノアシルtRNA合成酵素はなぜ誤ってから編集するのか
• 無駄なエネルギーを使っているのではないか
細菌では合成酵素が20種類以下で,同じ合成酵素を複数のアミノ酸をどうやって担当しているのか
 2種類以上のコドンと対合できるtRNA分子(3番目はゆらぎのある位置)を,細菌の合成酵素はどのようにして結合しているのか
• その結合ポケットの構造や電荷はどうなっているのか

他の議論点:
 ミトコンドリアで遺伝暗号が違う利点はあるのか
• DNAにナンセンス変異があるとそのRNAは一生分解され続けるのか
• なぜAUGが開始コドンなのか
• リボソームはどう進化したのか
• 原核生物の翻訳はなぜ早いのか
• 遺伝暗号がほぼすべての生物で保存されているのはなぜか

2012年11月22日木曜日

MBCセミナー 6.1 DNAからRNA

担当:岡村
参加者:10名

節の概要

DNAはRNAから転写された後にタンパク質に翻訳される.RNAにはmRNAをはじめrRNA,tRNAなどがあるが、タンパク質に翻訳されるmRNAは全体の2~3%にすぎない.DNAからRNAに転写される際にはRNAポリメラーゼが使われる.DNAに書かれた配列を認識して転写開始地点と終了地点を決定している.
真核生物ではmRNA前駆体からいくつかの修飾を経てmRNAが作られる.まず5'末端にキャップがつけられ途中がスプライシングされ,最後に3'末端が切断されてポリAがつけられる.そうして成熟したmRNAだけが翻訳にまわされる.
遺伝子によってはタンパク質にならずにRNAが最終産物になるものもある.rRNAやsnRNAが該当する.

議論した点

  1. スプライシングはいかに制御されるか
    • RNAの構造が関わっている?→すべる速度とか
    • スプライシングFactorがいくつか種類がある?(配列特異性)
    • ポリメラーゼ II についているタンパク質が決めている?
  2. 非翻訳RNAが働くメリット
    • タンパク質合成コストが省ける
      • 2段の増幅の方がたくさん作れる
    • 相補対形成がRNAが有利
      • 転写はタンパク質
        • 適当で良い?
      • 翻訳はRNA

その他の議論点

  • mRNAがあればDNAはいらない?
  • RNAは4文字だけでどうやって構造を作る?
  • エキソンはなぜ長さが均一なのか
  • コンセンサス配列の上流側のものと下流側のものの違い
  • プロモータの揺らぎはどの程度許されるのか
  • エキソンが3の倍数でないと読み飛ばしでフレームシフトがおこる
  • rRNAの数は種によってなぜ違うのか
  • 真核生物でRNAポリメラーゼが3種ある理由

2012年11月15日木曜日

MBCセミナー 5-2: DNA複製機構

担当:齊藤
参加者7名

節の概要:
すべての生物は、細胞分裂の前にDNAを正確に複製する必要がある。
精巧な複製装置が、並外れた精度を達成する仕組みが示されている。

議論した点:DNAを複製するタンパク質複合体が一カ所に留まれるのはなぜか
・何か支えるものがあるのか、細胞骨格等にくっついているのか
・複合体大きいために、比較的動かないだけではないか
 ・拡散定数等で説明できないか
・DNAにはあそびがあるので、全体を動かす必要がないためにDNA鎖を動かした方が楽なのかもしれない
・タンパク質を再利用することを考えると、複合体が動かない方が良さそう

他の議論点:
・DNAトポイソメラーゼ1がDNA二重らせんの両方についたらどうなるのか
・複数のタンパク質が協調して合成を行なうような複雑なものがどうして定着したのか
・高エネルギー結合を切断できるような酵素がもしあれば、3'→5'方向の合成できるのか
・RNA一本鎖を延ばすタンパク質は存在するのか
・修復タンパク質とニックが消えることの同期はされているのか

2012年11月8日木曜日

MBCセミナー4-5

担当:中村(篤)
参加者11名

節の概要
・複数の生物間で共通に見られるゲノムから、祖先のゲノムを推定することができる。また、ゲノムが変化する原因やその結果生じる変化について示す。

議論した点:遺伝子の新生は起こるか
・有用なタンパク質を作る遺伝子が新たにできることは無いのだろうか?
・まず転写因子が新たにできないといけない
・原核生物にはイントロンは無く、また複数の遺伝子が一気に転写されるので原核生物のほうが起こりやすそう
・タンパク質をコードする遺伝子ができなかったとしても、有用なRNAをコードする領域なら新生することはあるのではないだろうか?
・ヒトにあってチンパンジーにはない遺伝子があれば、遺伝子の新生が起きたと考えられないだろうか?
・共通の祖先由来の遺伝子がヒトには残り、チンパンジーからは失われてしまっただけの可能性もある
・単細胞生物が多細胞生物に進化したときには遺伝子の新生は起こったのだろうか?

他の議論点:
・ヒト加速領域でのゲノムの変異はなぜ加速したか
・動物細胞のミトコンドリアはなぜ変異しやすいか、また植物ではどうなのだろうか
・違う染色体に転移した遺伝子は何が変わるか
・遺伝子の可逆的な不活性化は無いのか
・トラフグのDNAはなぜ縮んだか
・他の種には加速領域はあるのか
・SNPの平均的な数は種によって違うのか
・ゲノムの変異率から、それぞれのゲノムの重要度を見てみたい
・血液型が将来一つになるとしたらどれが残るのか

感想:
多様な生物種が存在する理由付けとしては、遺伝子の重複と変異以外にも遺伝子の新生があった方が自然に感じました。
これから先の研究でそのような遺伝子が見つかったら面白いだろうなと思いました。

2012年11月1日木曜日

MBCセミナー 5-1: DNA塩基配列の維持


担当:沼倉
参加者:11名

節の概要:
・生物が種として長期的に生存するには,環境変化への適応のためにDNAの変化が必要である.一方で,細胞の短期的生存にはDNAの変化は防がなければならない.
・1回のDNA複製あたりの変異率は,生物種に共通して10^9塩基に1つであることが観察されており,正確な複製が行われている.

議論した点:
1. DNA複製が完璧すぎて環境に適応できなかった例はあるか.
・例としては考えにくい...
・では,多様性は必然?
  - 1/10^9は,多様性のための生物的な最適解なのか,DNA修復の限界であるのか.
   - 変異率の調整は,DNAポリメラーゼの活性や,DNA修復機構の活性で調節可能.
    - DNAポリメラーゼのホモログはある?
    - PCRのクオリティのための研究などで調べられている?
     - 工学的な観点から言えば,まだ変異率を下げられそう?
      - HDDなどのビットのエラーレートと比べて?
     - スピードとクオリティはトレードオフ
      - 幹細胞とその他の細胞では,幹細胞の方が守られてほしいが,変異率は違うのか.
    - 大腸菌では,環境の変化があったときにS.O.Sを出して変異率を上げることがある.
     - ウイルスなどはそもそも変異率高い方が有利?
      - 変異率の高い限界(DNA複製の正確さの下限)はどこか.
     - ヒトなどの高等生物では変異率を可変にする例はない?
・生殖細胞と体細胞での変異率の最適化(切り分け)はなされているか.
  - 生物は生殖細胞を通して,次世代に受け継ぐのが使命.
  - 生殖細胞ではある程度変異が欲しいが,体細胞のDNA複製は完璧で良いのでは.

2. 変異の蓄積について
・ヒトゲノムの長さは3*10^9なので,1回のDNA複製あたり,変異が3個入る.
  - 分裂時のDNA複製で変異が入った細胞がまた分裂するので,変異は蓄積する.
  - 例えば10年後の自分のゲノムは今の自分のゲノムとどれくらい違う?(同じだと思っていたが...)
   - 機能が損なわれる変異を持った細胞は死んで,一定以上の変異は蓄積されない?
   - DNA複製時以外の,環境要因による変異の影響はどの程度?
    - がん化するほどの変異の原因は環境要因と考えられている?
・de novo変異の観察について
  - trioで観察するが,子が成人になってからそのゲノムを読むのでは体細胞分裂での変異も含めてしまっている?
  - 生殖細胞のゲノムをみないと観察できない?


他の議論点:
・変異率がもっと低ければより複雑な生物が生まれうるのか.
・変異が入っても機能が失われない遺伝子の例.
・DNAの長さ,遺伝子数,種内での個体数から,限界変異率を算出できないか.
・がんは生命のいつの時代からあるのか.
・環境要因による変異は何世代くらい受け継がれるのか.


感想:
5.1節が3ページと少なかったが,内容としては生物の進化の根本となるものであり,活発な議論を行うことができた.