2019年12月17日火曜日

細胞の分子生物学 10章 膜の構造


担当:近藤
参加者:6名

[概要]
   生物における反応は化学反応が主である。この化学反応は溶液中で起こるが、溶液と器官を隔てるものが細胞膜である。細胞膜は主にリン脂質分子が親水部分を外側に向け結合した脂質二重層と、物質の出入りや細胞の形を維持するために用いられる膜タンパクから構成される。


[議論点]
膜があるかないかで生物か非生物かを分けることは妥当と言えるのか。

議論のポイントとしては、
  1. 現在の生物と定義されているものとされていないものについてどのような違いがあるか
  2. そのほかに生物であることを定義するために用いられている指標はあるか
といったことが挙げられた。

1. 生物と非生物について
まずは、生物と非生物について、あげた。
非生物としてはウイルスやプラスミド、ロボットが挙げられた。
膜という定義だけでは、ロボットが膜をまとったら生物になり得るという意見もあった。


2. 生物の定義生物の定義は簡単に決めることができるものではないが、遺伝子数や自己修復・代謝経路を持つか・自己複製 といった視点が挙げられた。
このほかにも、チューリングテストでの問題や同一機能を持つロボットは生物かといった、”機能”に着目し生物と定義することへの懸念事項が挙げられた。

この中で、自己複製 self-reproduction については深掘りをした。
その結果、生物とは、同じ種で self-reproduction が可能であるものと言えるのではないかとの意見がでた。(一方で、キメラやハイブリッドなど判例があるので、この定義も難しいものではある。)

また、”機能”という側面で見ると、膜は中のものが勝手にそとに出ないようにするものであると言える。
この観点から、膜を持つということは特徴についての定義ではなく、機能についての定義とも言えるだろう。

[まとめ]
まず、膜があるかないかだけで生物か非生物かを分けることは妥当でない。
一方で、非生物と生物の間に中のものが勝手に出ていかないという機能的な差があることは明らかである。
そして、膜以外の機能的な差としては、自己複製と自己修復が挙げられ、特に自己複製については大きな差が見られるのではないかという考察をした。



2019年11月19日火曜日

細胞の分子生物学 9章 細胞の可視化

担当:辻本

参加者:6名

[概要]
 細胞の機能を知る上で、その構造を知ることは不可欠である。肉眼では観察できないような構造を光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いることで可視化することができる。光学顕微鏡では、蛍光タンパクなどを用いて細胞内の動態の観察を行うことができ、電子顕微鏡を用いれば、より高分解能の実現が可能となる。


[議論点]
細胞のダイナミクスを高解像度でとらえるために何が必要か

 ここでは、細胞のダイナミクスをとらえることをタンパク質の輸送や分子の動きなど、5nmほどのものを観察することと定義した。

 電子顕微鏡では、高分解能を実現できるが、電子を用いるため真空中でなければ利用できず、様々な試料の調整が必要となる。これでは生きた細胞内の動態を細かく観察することはできない。それに対し、光学顕微鏡では、電子顕微鏡のような高分解能を実現することはできない。

 まずはじめに、光学顕微鏡と電子顕微鏡のメリットとデメリットについて議論した。

[光学顕微鏡]
・調節の幅が広い。(拡大率が広い)
・生きている状態の観察が可能。
・色々な標識を行うことができる。
・分解能が電子顕微鏡に比べて低い。
・発光タンパクが大きい。

[電子顕微鏡]
・分解能が高い。
・真空中でないと電子を利用することができない。→生きた状態の維持ができない。
・標識しづらい。

 ここから、これらの顕微鏡の改良方法について議論した。

[光学顕微鏡]
・波長を短くして分解能を上げる。→波長が短くなるとエネルギーが大きくなるため、分子の損傷や大規模な移動が生じてしまう。
・発光タンパクを小さくしたり、発光方向をレーザー分子のようなものを用いたり、他方向の光を制御したりして、一方向に定めることで、分子の向いている方向や回転の状態などを読み取る。
・AFMを用いれば作った基盤上でタンパク質の動きを追うことが可能。

[電子顕微鏡]
・時系列に沿った複数の試料を用いたり、瞬間冷凍や瞬間解凍技術を使用して、ダイナミクスを実現する。

 他にも細胞シミュレーションを用いれば、分子レベルでダイナミクスをシミュレーションすることが可能である。その上で、顕微鏡技術とシミュレーション技術のギャップを両方向から埋めることが重要である。

[まとめ]
 細胞のダイナミクスをとらえるために、光学顕微鏡では、蛍光タンパクの方向性や大きさを小さくするというような改良方法が挙げられる。電子顕微鏡では、試料の扱い方の見直しを図ることで細胞のダイナミクスの観察が実現可能であると考えられる。また、より精度の高い観察を行うために、顕微鏡技術とシミュレーション技術の改良を双方向から行う必要がある。

2019年11月12日火曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞,分子,生体システムを解析する 6節,9章 細胞の可視化(一部)

担当:川上
参加者:7名

[概要]
 細胞機能の定量化のために数学的な解析が必要である.タンパク質などの濃度に関する微分方程式の解析により継時変化や細胞機能の頑健性などを導出することができる.確率論的なモデルや統計的解析も重要である.
 細胞を光学顕微鏡で観察する際には顕微鏡法の選択や蛍光色素などでの標識が重要である.

[議論点]
組織などの大きな構造は数学的に記述可能か,またエージェントベースモデルを用いるとどのような有益な情報が得られるか

 教科書にあるように,細胞中のタンパク質の濃度のような小さいスケールのものはモデル化できるが,より大きな組織についてモデル化できるかという疑問から,心臓を例に組織のモデル化について検討した.また,数学的な記述の手法としてエージェントベースモデルは他の表し方と比べてどのような点が有用なのかという点について検討した.

 心臓をモデル化する場合,他の器官(脳など)や外的要因(酸素濃度,機構など)について考慮するか,または心臓を構成する細胞の仕組みに還元してモデル化するかといったことに関して議論した.

 心臓の脈拍についてモデル化することを考える場合,外的要因が脈拍にどのように影響するか,その要因を変数とした関数を求めることで脈拍をモデル化できると考えた.そのような関数は漸化式や一般式により表されるが,一般式を求めることは困難であることも多く,また内部のメカニズムについて考察するためには解析可能な式の形にする必要がある.しかしそれでも外的要因の影響を正しく捉えられていれば,End-to-Endな予測が可能で有益な場合もある.

 また,脈拍を心臓の細胞の仕組みに還元してモデル化する場合,エージェントベースモデルの利用が考えられる.エージェントベースモデルにおいては,観察結果に合う振る舞いを得るために一つ下の階層のエージェントについてモデル化する(例えば心臓の振る舞い(脈など)を生み出すための細胞(群)のモデル化).下層の仕組みをモデル化することで上層の振る舞いが再現できた場合,それは下層のモデルが正しいことを支持する.このようにエージェントモデルは構成論的にモデルを構築するため,上層で発生する現象が下層のどのような性質に基づくのか,メカニズムについて考察することができる.

 これらを比較すると,変数同士の関係式を求める手法では,内部に複雑なメカニズムを有していても最終的には何らかのパターンに収斂していくような現象についてはEnd-to-Endなモデル化が可能である.しかしそのモデルの解釈性はモデルの立て方に依存している部分もある.エージェントベースのモデル化ではエージェントの設定の仕方によりメカニズムについての考察が可能である.ただしエージェントと集団の関係が何層にも階層化するとそれらを総合した結果は複雑となりうる.

[まとめ]
 組織などの大きな構造をモデル化する場合は何に着目してモデル化するかが重要であり,適切な要因に着目すればモデル化は可能である.エージェントベースモデルを用いると階層的な構造からなる現象についてメカニズムを考察することが可能である.

2019年11月5日火曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞, 分子, 生体システムを解析する 4~5節

担当:永井
参加者:7名

[概要]
 制限酵素による特定部位のDNA切断や、DNAのクローニング、DNA配列の解読などをはじめとするDNAの解析と操作の種々の手法、組換えDNA技術ができたことで、逆遺伝学が生まれた。
 変異体から遺伝型を同定する古典遺伝学とは異なり、逆遺伝学は遺伝子から変異体を探る手法である。

[議論点]
多遺伝子性疾患でもタンパク質の機能がすべて分かれば、原因を特定・予測することは可能か。可能でないとすると何が必要か。

[定義・前提]
・環境要因はなるべく切り離し、遺伝要因で考える
・原因の特定は、どの遺伝子かの同定とする

[タンパク質の機能]
・相互作用、ネットワーク
・ダイナミクス
・どの分子に作用するか
・タンパク質の状態遷移  など

[具体例]
多遺伝子性疾患 = 糖尿病
症状 = 尿の量が増える

細胞→組織→器官→個体、と同じような具合で最下層を「タンパク質の機能」に、最上層を「多遺伝子性疾患の症状」としてボトムアップで考えていくと、設定したようなタンパク質の機能のみでは、例えば器官ごとの異なる遺伝子発現機構の情報は得られなそう

[まとめ]
 多遺伝子性疾患は複数の要因が複数のレイヤーで連なって発生すると考えられ、タンパク質の機能のみから多遺伝子性疾患の症状を特定するのは難しそう。

2019年11月4日月曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞, 分子, 生体システムを解析する 1~3節

担当:菅野
参加者:7名

[概要]
 生体機能の解明には生化学的解析が必要で、そのために細胞を単離・培養する。多くの動物細胞は老化によって一定回数分裂すると死ぬため不死化する必要がある。こうして得られたものから超遠心機やクロマトグラフィーなどを用いて目的のタンパク質を抽出する。質量分析法や平衡結合実験、X線結晶解析や核磁気共鳴分光法などを用いてその性質や構造を決定できる。

[議論点]
不死化細胞と正常細胞からわかることの違いは何か。

[議論での定義]
 ここで言う不死化細胞は不死化した細胞を指すことにする。そのため形質転換細胞株なども含めた形で議論されている。

[不死化細胞と正常細胞の違い]
不死化細胞と正常細胞を比較して議論した。

・増殖能力(分裂し続けられる能力):条件次第で無限 ⇔ 老化による有限
・テロメアの長さ:なくならない ⇔ なくなる
・変異量:多い ⇔ 少ない
・表面の形質:不死化細胞は接着しにくく、他細胞と接着してなくても殖えられる。

[わかることの違い]
ここでは不死化細胞の視点で議論した。

 < 増殖能力やテロメアの長さ(老化の有無)による違いから >
・細胞老化の研究はしにくい(老化による時間的スケールが消失しているため)
 →ある世代(時間)を固定して殖やすことができれば可能か
・正常細胞とは分裂の性質が変わる可能性がある

 < 表面の形質の違いから >
・細胞同士のコミュニケーションに対して研究は難しい

[まとめ]
 不死化した細胞は老化という時間的スケールを失うことで無限に増殖可能だが、それによって老化による影響を調べることは難しいだろう。また表面の形質が変わることで、細胞間のコミュニケーションも研究が難しいと考えられる。

2019年10月29日火曜日

細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第6-7節

担当:近藤

参加者:7名

[概要]
 これまで、転写開始の制御について扱ってきた。一方で転写後に働く転写後調節も多くの遺伝子に欠かせないものである。これはNRAスプライシング部位の選択といったところから、RNAの編集まで様々な機構を有している。
また、非翻訳RNA (ncRNA) は遺伝暗号の読み取りやタンパク質の合成を行うものもあり、こういったRNAについての研究も進められている。


[議論点]
タンパク質の機能をncRNAが代替することは可能か

[前提 1 ]
人のような複雑な動物では、より複雑な構造をとるためにタンパク質が利用されており、RNAはそれらを作成するためより低いレイヤーで利用されている。

[前提 2 ]
RNAは回転に置いて3方向の自由度をもつが、タンパク質は2方向である。

[前提3]
RNAは配列を認識する(免疫機能)役割を多くもち、自身も分解することができる。
一方、タンパク質はRNAと比較して酵素という働きをすることができ、構造的に相補的な配列を認識することができる。

この他にも分解されやすさや体内での機能ついて議論されたが、ncRNAで代替できるかどうかの踏み込んだ議論を展開することはできなかった。

[まとめ]
RNAとタンパク質の自由度が異なることから、生体内での強度が異なると考えられる。つまり、大きな生物を構成するには現状タンパク質が必須ということになる。一方で、ncRNAでも強固な構造を持つことができることも研究されていおり、まだまだ議論の余地がある。

2019年9月17日火曜日

細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第4-5節

担当:辻本

参加者:7名

[概要]
 真核生物は、遺伝子発現を転写調節因子の組み合わせにより調節している。遺伝子発現パターンを細胞に記憶させるため、フィードバックループやDNAのメチル化、クロマチン凝縮状態を付加機構として使っている。

[議論点]
転写回路のモチーフによってどんな機構を持たせられるか。

THE CELLのFig.7-40のモチーフが生物内のどのような働きに利用されているかについて
・正のフィードバックループ→増えても困らないもの、ずっと作り続ける(ex.RNAポリメラーゼのように回転率に限界があるもの)
 →基本的に細胞などの状態(機能)の記憶に利用されている→アナログで簡単なため、機構のはじめなどに利用されているのではないか。
・負のフィードバックループ→体温調節などまわりの量に応じて対応するものに利用
 →0,1ではなく量的なものに対応
・フィードフォワードループ→ローパスフィルターのような作用

高次な信号処理
多細胞生物では、上記のモチーフにより記憶を可能にしている。
また、概日リズムやコウモリの超音波に認識などに利用されているのではないかと考えられる。

[まとめ]
 転写回路のモチーフは、生体内の様々な信号処理に利用され、このモチーフの組み合わせによって高次な機能をも可能にしていると考えられる。

2019年7月19日金曜日

細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第1-3節

担当:川上
参加者:6名

[概要]
 多細胞生物の多様な細胞型は同じゲノムから異なる量や質の遺伝子産物が発現することにより実現される.遺伝子産物の発現調節は主に転写の段階で行われ,転写活性化因子,転写抑制因子,クロマチン構造の変化,ゲノム修飾などにより調節される.原核生物より真核生物の方が複雑な調節を行う.

[議論点]
転写調節は活性化因子のみでは行えないのか

 転写調節の機構がなぜこのように複雑なのかという疑問から,具体的に簡略化する方法として活性化因子のみで調節を行うことが可能かという点について議論した.

 まず活性化因子が結合している場合(ONとする),抑制因子が結合している場合(OFFとする),何も結合していない場合(Neutralとする)で転写量がどれくらい変化するかを見積もった.仮にONの時を100,OFFの時を0(0.01程度)とした.

 真核生物の転写調節は活性化/抑制因子の結合によるファインチューニング的な調節以外にも細胞型を左右するクロマチン構造やメチル化による大雑把な調節がされており,Neutralにおける転写量は遺伝子により異なる.今回の議論では簡略化のためそのような大雑把な調節機構がない原核生物における調節を仮定し,Neutralにおける転写量を5程度と見積もった.

 具体例としてlacオペロンによる調節を考える.lacオペロンではグルコースが存在下で活性化因子の結合,ラクトース非存在下で抑制因子の結合が起こり,それぞれの環境で以下のような量で転写されると考えられる.

A: glc+ lac+ → 5 (Neutral)
B: glc+ lac- → 0 (OFF)
C: glc- lac+ → 100 (ON)
D: glc- lac- → 1 (ONかつOFF,Neutralよりは少ないと仮定)

一方で抑制因子による調節がなくなった場合,以下のように転写量が変化する.

A: glc+ lac+ → 5 (Neutral)
B: glc+ lac- → 5 (Neutral)
C: glc- lac+ → 100 (ON)
D: glc- lac- → 100 (ON)

最も変化が大きいのは環境Dにおいてラクトースがない環境においても転写を続けてしまうという変化であり,それにより起こりうる影響を以下に示す.

・発現したタンパク質はラクトースが存在する環境になるまでの在庫となる
・発現したタンパク質はやがて分解されてしまうため使われなければ無駄である
・グルコースが存在するようになるまで延々とタンパク質を合成するためコストがかかる

転写抑制がされなかった場合,使われなかったタンパク質が有害になるとは考えにくいが,転写翻訳のためのエネルギー消費により生存に不利になることが考えられる.抑制因子を用いて転写調節を行うためのコストと環境Dにおいて転写が抑制されないことによるコストを比較した.抑制因子は活性化因子に比べ特異性や他の分子との相互作用が少なくて済むため,活性化因子を用いることよりはコストが少ない.一方で環境Dにおいて転写が抑制されなかった場合,ただでさえエネルギー源が少ない環境でエネルギー消費が増大し,適応的とは言えない.そのためこの例については抑制因子を用いることがより多様な環境に適応する上で有利だと考えた.

[まとめ]
 以上の議論の結果,活性化因子と抑制因子の両方を用いることでより多様な環境に適応的な応答ができるため,両方を有する調節機能が発達したと考えた.

2019年7月9日火曜日

細胞の分子生物学 6章 ゲノム情報の読み取り 第2,3節

担当:永井
参加者:6名

[概要]
 RNAからタンパク質への翻訳は触媒作用を持つ分子装置、リボソームによって行われる。リボソームには大小のサブユニットがあり、小サブユニットがtRNAとmRNAのコドンを対応させ、大サブユニットがアミノ酸間にペプチド結合を形成してポリペプチド鎖を作る。
 RNA世界仮説は、かつてはRNAが遺伝情報の媒体であり、化学反応の触媒でもあったとする仮説である。


[議論点]
コドンの対応はなぜ今のようになったか

コドンへの疑問として
・割り当ての数の違い(2~6)
・トリプレットの最後のヌクレオチドは2種で良いのでは?(4x4x2)
・終止コドンはなぜ3つも割り当てられたか
などが挙げられた

それに対してコドンの割り当てが今のようになった要因として
・1文字目は大きさ、2文字目は性質を保存しているのではないか
・ややこしいものとして、終止やトリプトファンなどがまとめられているのでは?
・合成経路でまとめられているのでは?
・誤って生成されても害の少ないものに多く割り当てているのではないか?
などが挙げられた

終止シグナルについて、コドンではなく、TATAなどの配列で表す方法が考えられる
この方法ならば、偶然終止してしまうことを減らせ、フレームシフトにも耐性がある
しかし、偶然終止することが少ないのは一概に良いとは言えない
終止コドンの割り当て数を変えれば、偶然終止することのおきやすさを調整できるのではないか

終止コドンはATリッチ(100%と66%)

GCリッチの太古の生物は重要なアミノ酸をGCリッチのコドンに割り当て、余ったATリッチのコドンに終止などを割り当てたのでは?


[まとめ]
 コドンの対応が現在のものになった要因についての議論が盛んに行われた。コドンの冗長性が疑問視されたが、それらは上に挙げられた要因などで説明ができ、可変性があるという点から好ましいものだと考えられる。

2019年7月8日月曜日

細胞の分子生物学 6章 ゲノム情報の読み取り 第1節

担当:菅野

参加者:6名

[概要]
 DNAの情報は、そこからRNAというものに写し取られて利用される。この作業を転写という。これによってできたRNAはタンパク質の設計図であったり、そのまま物質として機能を持つ。
 真核生物では、DNAから写し取られたRNAにマーカーをつけて、いらない部分を取り除くスプライシングという作業を行う。この取り除き方によって、同じDNA配列部分の写しでも複数の最終産物を作ることができる。


[議論点]
スプライシングの仕方により異なるタンパク質を別々にコードするのに十分な領域があるにも関わらずなぜ別々にコードしないのか

ここでは、原核生物のようなDNAに直接タンパク質の情報を記述する場合(A)と、真核生物のようなイントロンありでRNAにし、スプライシングして利用する場合(B)を対立させて考えていく。

仮定 :
DNAの長さは現在と変わらず、使われていない部分に情報を入れていく。

(A)DNAに直接記述する
+メリット
・スプライシングに関連する情報はいらない。
・核の構造も必要でなくなり、転写と翻訳を同時にできる。
-デメリット
・新しい機能タンパク質を生み出すのが難しい。
・DNAを読む数が多くなる上、それぞれの発現調整も必要。
・1つ1つの変異がダメージになりやすい。

(B)スプライシングを利用する
+メリット
・イントロンがあるため確率的には重要なところにダメージが入りにくい。
・情報容量が大きい。
・バリエーションを比較的容易に増やせる。
・新しい機能タンパク質を生み出しやすい。
-デメリット
・1つのエキソンに変異が入るとそれを用いて作られる複数のタンパクが機能しなくなる。

そもそも少し違う新しいタンパク質を生み出すことは必要なのか。
→ほとんど同じ形だが、活性部位だけ変えたいということがあるとき有用。ただし、場合によっては生体に有害なことを引き起こすものが発生する可能性もある。


[まとめ]
 DNAに直接タンパク質の情報を記述する場合、DNAからの情報伝達が効率化できるが、それらの管理や新しいタンパク質を生成するのが難しい。一方イントロンありで記述すると、確率的にエクソンに変異は起こりにくいが、一度入ると、その部分は複数のタンパク質生成で使われているために、致命的なダメージになる。また、エキソンの組み合わせでタンパク質を記述されるために、組み合わせは変えられるため、バリエーションを増やすことができる。

2019年7月2日火曜日

細胞の分子生物学 第5章(後半) DNAの修復、組み換え

担当:近藤

参加者:6名

[概要]
 有害な変異を最小限にとどめるために、生物はDNAの修復機構をもつ。複製の間違いを正すような簡単なものから、放射線で2本のDNAが両方破損した時に修復するようなものまで多くの修復機構をもつ。
一方で、DNAの間を転移することができる因子があり、この因子の働きによって進化に必要なDNAの変化が生み出される。


[議論点]
転移によりゲノムが無駄に長くなることは有害ではないのか

[前提 1 ]
転移は、転移因子によって引き起こされるが、転移先で新たなDNAの鋳型が作られるようになるため、転移を繰り返すことでゲノムは長くなってしまう。

[前提 2 ]
今回はDNA配列の長さについて考える( 遺伝子の長さとは区別する )

DNAが長いとどうなりそうか
・(bad) 遺伝子を探すのが大変そう
・(bad) 維持コスト、複製コストが大きくなりそう
・重要ような遺伝子が変異する確率が下がる
・(good) 非コード領域で新しい機能が追加される

コストについて
コストについて考えてみると、複製コストはせいぜいnオーダでできるだろうという結論に至った。一方で、維持コストや探すコストについてはその構造がカスケードになっているとそのカスケード分(k)コストが増えてしまう。n^kとなってしまうと、明らかに時間がかかるだろうという結論に至った。

非コード領域で新しい機能が追加される について
・人間の非コード領域は99%である。
・新しい機能が追加され、有害であればその個体が死ぬ。一方で効果的であった場合は広まり集団に広まりやすい。

[まとめ]
一般化することはできないが、非コード領域を多く持つような生物種にとってゲノムが長くなることは問題ではなく、その長さがゆえに転移を許容することができる。
また、ゲノムが長くなることによってコストが莫大にかかるようになるため細胞の時間感覚が長くなると考えられ、これが寿命の長さと関係しているのではないかという考察も得ることができた。

2019年6月4日火曜日

細胞の分子生物学 第5章(前半) DNAの複製

担当:辻本
参加者:6名

[概要]
 DNAの複製により、生物は遺伝情報を伝え、その高度な秩序を保っている。この複製には、半保存的複製とその誤りを減らす校正機構があり、それによって生命にとって有害な変異を最小限にとどめている。


[議論点]
時代や環境によって変異率[占有率]は変化するのか?

変異率の定義
個体はその複製機構が議論の主題になり、集団は環境の変化が変異に影響をもたらすのではないかと考え、変異率を集団の占有率とすることにした。

進化とスピードの関係
・現在の人間は進化がゆるまりそう
・地球温暖化など人間による環境の変化が他の生物にも影響をもたらしている
・農薬により耐性のある菌のみが生き残る

変異を固定することのメリット・デメリット
メリットとして、
・種分化(競争的でなくなり、現在の環境に対して利点の多い状態のものが中心的に生息)
・最小限化(ずっと暑いなら厚手の服はいらないなどの必要なものを減らすことができる)
デメリットとして、
・環境の変化への不適応(環境が変化したら生存が困難になる)
が挙げられた。

変異率と環境の関係
・ブラックバスが日本の川に放された時、幾つかの生物は絶滅する
・人間は環境の変化を道具によって対処し、その意味では変異を固定している


[まとめ]
 環境が変化すると、強い集団が残ったりある適応性を持った種が生き延びるため、環境によって変異率は変化すると言える。

2019年5月15日水曜日

細胞の分子生物学 4章 DNA, 染色体, ゲノム

担当:川上
参加者:6名

[概要]
 遺伝情報はDNAの塩基配列として記録され、DNAはタンパク質と結合し凝集して染色体に格納される。染色体の部分構造により遺伝子の発現が制御され、この構造はエピジェネティックに継承される。ゲノムは突然変異などで多様化し、種間のゲノム比較により進化の過程や配列と機能の関連が推定される。

[議論点]
多様な性の決定方法がある中で、なぜヒトはX, Y染色体の組み合わせにより性が決定されるのか

 XXYは男性なのか、女性なのか(なぜ性の決定のためにX, Y染色体が用いられるのか)という疑問から発展し、上記のテーマに論点を絞って議論した。

性の決定方法には以下のように様々な形態がある
①成長の途中で一部の個体の性が変わる(一部の魚)
②染色体の組み合わせによって決まる(哺乳類)
③卵の周囲の温度で決まる(爬虫類など)

 これらの決定方法により異なるのは性の比であると考えた。そこで①、②の方法により生ずる性比の偏りと、偏りにより生ずる影響を挙げた。

①の場合
 メスが集団の大部分を占め、集団の一部であるオスが死ぬとメスの一部がオスに性転換する(コブダイ)例がある。この場合、

・メスが多いため、集団として産むことができる子の数は多い
・オス同士の競争による繁殖可能な個体の減少がない
・遺伝的多様性はメスの遺伝的多様性にほぼ依存
・集団として戦力が不足する?

 つまり、集団が多数の子をつくる上では合理的だが、遺伝的多様性には欠けるという影響が考えられる。
 また、魚は卵生でありメスが子宮を持たないという点でメスとオスの構造が類似しており、性転換が比較的容易なのではないかとも考えた。

②の場合
 X, Y染色体の分配により性が決まるため、性比はほぼ1:1である。この場合、

・オスとメスの組み合わせの数が多いので遺伝的多様性が高まる
・オス同士の競争により、その時々に適応した能力を持つオスが選択される
・繁殖できないオスが存在する
・メスが(①と比較して)少ないため集団として産むことができる子の数は比較的少ない

 つまり、子の遺伝的多様性は高まるが、集団がつくることのできる子の数は少なくなるという影響が考えられる。
 また、哺乳類は胎生でありメスが子宮を持つためメスとオスの構造が大きく異なり、性転換が困難である一方で、逆に構造の差を大きくすることができるのではないかとも考えた。

 このように①と②の間には遺伝的多様性と集団がつくる子の数において対称的なメリット・デメリットがあると考えられる。さらに①や②の方法をとる種には卵生、胎生による違いも存在する。

 これらから考えられる結論は以下の通りである。異なる性の決定方法はそれぞれメリット・デメリットを持ち、どのような戦略が有効かは種により異なる。関連する要因としては、性に特有の構造・役割の違い、卵生・胎生の違い、捕食されやすさの違いなどが考えられる。

2019年5月7日火曜日

細胞の分子生物学 第3章 タンパク質

担当:永井
参加者:6名

[概要]
 タンパク質には安定な折りたたみ構造であるコンホメーションがあり、その構造によって、結合する物質であるリガンドは決まる。そして、リガンドと結合することによってコンホメーションは変化し、特定の機能は発揮される。

[議論点]
ヒトはタンパク質でどれくらい語ることができるのか。(タンパク質1つ1つを調べることで個人の特性はわかるのか。)

タンパク質の機能は何があるか。それらの機能は個体の特性にどう関与しているか

タンパク質の機能
 ・酵素としての機能
 ・繊維を構成
 ・物質を識別(ex.抗体が抗原を識別)
 ・物質の輸送(ex.トランスポーター)
 ・エネルギーの貯蔵(ex.筋肉はエネルギー源となる)

個体の特性 →  性格、体格、運動能力、感覚特性、見た目、頭の良さ、メンタルなど

運動能力を具体化・限定して、"筋肉の量と質"に変換
"筋肉の量と質" それぞれに、上で挙げた機能はどう関与するか

筋肉の量
 ・酵素としての機能 = 合成を制御することで量を調整

筋肉の質
 ・酵素としての機能 = 乳酸を分解し、質を高める
 ・物質の輸送 = 乳酸・ATPの輸送し、質を高める


[まとめ]
 個体の数ある特性の中の運動能力について、タンパク質の機能は関与していると言える。

2019年4月26日金曜日

[MBCセミナー2019]細胞の分子生物学 第2章 「細胞の化学と生合成」

担当:菅野
参加者:4名

[概要]
 生体内では様々な分子が働いている。その中でもタンパク質は非常に多くの場面で使われ、例えば触媒として多くの反応を促進する。代謝反応では、解糖などで、取り入れた栄養物を段階的に酸化することでエネルギーをADP→ATPやNAD+→NADHなどにして貯蓄し、それらを使って起こりにくい反応を進めることができる。代謝反応は高度に組織化され、そのバランスは驚くほど安定である。

[議論点]
ATPを増やせば増やすほど良いものなのか

ここではATPが過剰に多い状態において、悪影響があるか議論する

細胞内では
(ATPの量)+(ADPの量)= 一定
であるため、ATPが過剰に多いということはADPが非常に少ないということ
→ADPを使う解糖系が進まない

解糖やその先にあるクエン酸回路などの途中で生成される物質は他の反応経路にも使われたりする
→解糖が進まないとそれらの途中生成物もできないため、それを使う反応経路も進まなくなる

→ATPとADPの比が重要

この状態を元の状態に戻すには?
→AMP・ADPを合成する
→ATPを分解および細胞・生体外へ排出する
→解糖系などの反応経路を逆に辿ってATPを消費し、ポリグルコースを生成する

[まとめ]
 ATPが過剰に多いとADPが少なくなり、解糖系が進まず、それらの途中生成物を使う他の反応系もうまく進まなくなるため、ATPとADPの比が重要である。

2019年4月16日火曜日

担当:大林
参加者:6名

[概要]
 細胞は、全生物に共通する機構であるDNA→RNA→タンパク質という情報の流れに基づいた物質代謝を行い、その恒常性を実現している。この機構の成立の背景には遺伝子重複や細胞内共生などの遺伝子資源を増やす仕組みがある。

[議論点]
真核細胞においてミトコンドリアや葉緑体の一部の遺伝子がなぜ宿主細胞のDNAに移る必要があったのか

(簡単のため、共生前のミトコンドリアをMTオリジナルと書くことにする)

共生前後のミトコンドリア遺伝子
 MTオリジナル(5000遺伝子程度、細菌と同程度)
 ミトコンドリア(100遺伝子程度)
 参考:核(10000遺伝子程度)

→ ミトコンドリア遺伝子は
   (1) 核に移った →  核が、ミトコンドリアの数や活性を制御するため
   (2) 消滅した     → 機能重複の回避

共生前後のミトコンドリアの機能
 MTオリジナルの機能:好気的エネルギー生産、動く、食べる、増える
 ミトコンドリアの機能:好気的エネルギー生産

共生の理由
 ホストは共生で高効率なエネルギー生産手段を獲得
 MTオリジナルは防御をホストに委ねることができる

一部の遺伝子がミトコンドリアゲノムに残った理由
 遺伝子資源の区分化(輸送する必要がなくなる)
 半自律的制御(酸素呼吸による障害に迅速に対応するため)

[まとめ]
 ホスト細胞の活動に合わせてミトコンドリアの数や活性を制御するため、主に制御関連の遺伝子が核に移動した。

2019年1月22日火曜日

細胞の分子生物学 12章「細胞内区画とタンパク質の選別」4,5節

担当:荒井
参加者:6名

概要
 ペルオキシソームは全ての真核生物に存在する小器官であり、原始の生物において全ての酸素代謝を引き受けていた器官の痕跡であると考えられている。今現在でも酸化作用を担っており、この器官に異常が起きると精神疾患につながる可能性がある。
 小胞体も真核生物に共通する器官であり、細胞質内に広がって存在している。様々な機能を担う器官であり、その機能は領域ごとに高度に専門化されている。また、ミトコンドリアや葉緑体が翻訳後にタンパク質の輸送を行うのに対して、小胞体は翻訳と輸送を同時進行する。小胞体の重要な生合成機能の一つとして、タンパク質への共有結合による糖質付加があり、それによって折り畳みが不完全なタンパク質の不可逆的な凝集を防いでいる。小胞体に輸送されるタンパク質の多く(80%以上)は不完全な折り畳みやオリゴマー状態でないなど分解しなければならないタンパク質であり、それらが小胞体内にたまると小胞体ストレス応答によって対処する。

議題
小胞体がタンパク質の翻訳と輸送を同時進行するメリットとは?

議論点
ミトコンドリアや葉緑体ではタンパク質の翻訳及び輸送は同時進行せず、翻訳が終わった後に輸送される

小胞体でも翻訳後のタンパク質輸送は行われる(酵母の小胞体膜、細胞の細菌膜)
 メリット
  ・タンパク質を小胞体膜に埋め込むことが可能
 デメリット
  ・補助タンパク質としてhsp70が必要
  ・ATP依存となり、エネルギーを消費(これはデメリットとして大きい)

シグナル仮説
 リボソームを翻訳するとシグナル配列が出現し、転送装置まで導かれる。その後に翻訳と輸送が同時に行われる(細胞質内で翻訳されるリボソームも存在する)。

まとめ
 ATPを消費することなくタンパク質の輸送が可能、補助タンパク質無しでの輸送が可能であるという点が翻訳・輸送の同時進行による大きなメリットであると考えられる。一方で、タンパク質を小胞体膜に埋め込むなど同時進行では不可能な事象も存在するため、翻訳後の輸送を行う場合もあると考えられる。

2019年1月20日日曜日

Nature Podcast Digital energy (B4 三好)

担当 みよし
出席者 7名


概要:
https://www.nature.com/articles/d41586-018-06679-5#MO0

・データセンターで使われる電力消費量は増える見通し
・ここ10年間では省エネ技術は大幅に進歩したことにより、データセンターによる電力消費量は横ばい
・しかし、省エネ技術の進歩はいずれ終わりがくることが予測されるが、電力需要は際限がない

議論点
 情報産業によるエネルギー消費量が増える事で起こる影響


現状:

・インターネットを使用する人数は人口増加に伴い増えるのは避けられない
・それに伴ってデータ量も指数関数的に増える
・一方で電力使用の効率化、省エネ化は線形的にしか増えない


予測される未来:

・電気料金が上がる
・通信料金が上がる

まとめ:
電力需要の伸びは際限が無く、今後個人レベルで節電、節データ使用を強いられる将来は避けられないだろう