2020年12月25日金曜日

細胞の分子生物学 第18章 細胞死

 担当:小林駿平

参加者:6名

【議論点】
なぜ実行カスパーゼの活性化は開始カスパーゼを介して行われるのか

1.アポトーシスの過程
アポトーシス誘発シグナルにより、開始カスパーゼの二量体を形成
→プロテアーゼドメインを活性化させ、特定部位を切断する
→実行カスパーゼ二量体が活性化
→アポトーシスが起こる

2.開始カスパーゼの特徴、機能
・通常は活性のない水溶性単量体
・一つの開始カスパーゼが複数の実行カスパーゼを活性化(連鎖増幅)

3.実行カスパーゼしかない場合のメリットデメリット
メリット
・二段階だったものが一段階になるため、処理がはやくなる
デメリット

・シグナルが大量に必要になる(種類、量)

・局在性が生まれ、細胞内の移動に余計な時間がかかる


4.開始カスパーゼを介した二段階制御のメリット

・連鎖増幅により効率が上がっている

・二段階制御の方がミスが少ない

・抑制と活性の制御が簡単(細胞死の量の制御)

一つの受容体で活性と抑制両方のシグナルを受け取り制御を行うよりも、

 別々の受容体で受け取り、後に情報を統合したほうが制御が容易

・異なる入力経路に対し、同じ実行カスパーゼを使える

開始カスパーゼを介することで、内因性と外因性のアポトーシス両方に、

 1種類の実行カスパーゼが適用できるため効率的


5.結論
二段階制御の方が効率や制御の容易さなどの観点でメリットが大きいため、実行カスパーゼの活性化は開始カスパーゼを介していると考えられる。

2020年12月15日火曜日

News & Views How DNA and RNA subunits might have formed to make the first genetic alphabet

 担当:近藤

参加者:6名


【議論点】

本文の仮説が正しかった場合,RNAとDNAの両方のヌクレオチドを含む核酸分子はなぜ分離をしたのか

  1. DNAとRNAの構造的なちがい
    ・糖が異なる
    ・塩基の違い(ATGC)と(AUGC)
    ・RNA1本鎖、DNAは2本鎖
    ・DNAは変異が少ない
    ・RNAは分解されやすい
    ・DNAは構造を作りにくい(安定)
    ・RNAは水素結合しやすい
  2. DNAとRNAの機能的な違い
    ・DNA(2億5000万塩基対)RNA(数千塩基対)
    ・RNA1本鎖、DNAは2本鎖(lifespan)
    ・DNAは極性がない
    ・DNA情報の保持、RNA伝令、アダプター
  3. RNAとDNAの両方のヌクレオチドを含む状態の定義 ・同じ分子内にDNA(情報保持)RNA(伝達)が両方の機能がある ・伝達と情報保持の区別はない伝達分子のみを分解する酵素はない →分解する場合、遺伝情報自体も両方分解 ・塩基対ができる→2本鎖になれる ・分子の状態で機能を区別できる
  4. 核酸分子を分離したことによるメリット
    必要な部分のみを切り出せる(状態を区別できない場合) ・伝達分子のみを分解することができる(状態を区別できない場合) ・状態(複製と転写)の区別が簡単 ・遺伝情報の修復の際に(一本鎖になるから)状態の区別が難しい(状態で区別する際)
  5. 結論
    RNAとDNAを分離した方がメリットが大きいため分離したと考えられる。

2020年12月8日火曜日

News & Views: A safe fix for alcohol-derived DNA damage

担当: 高橋宏


参加者: 6名


URL: https://www.nature.com/articles/d41586-020-00462-1


【議論点】

 容易にアポトーシスを選択することは危険なのか


1. アポトーシスのメリット・デメリット

 メリット

 ・誤りはなさそう

 デメリット

 ・リサイクルできない(エネルギー多)

 ・限界が早く来そう(細胞分裂の回数に限界があるから)


2. リサイクルできない事により生じる問題点

 A.アポトーシスした細胞を作る必要がある

 B.アポトーシスされてしまうから

 C.アポトーシスの回数が増えるから


3. A,B,Cの詳細な問題点

 A.エネルギーが多く必要

  →子供の数が減る

 B.役割を担う細胞が減る(多細胞生物)

  →常に予備が必要になる

   予備を作るのにもエネルギーが必要

 C.アポトーシスが正常に機能しなくなる可能性が増える

  →癌化の危険性が増える

   →アポトーシスの経路も複数必要になる


4. 細胞分裂の限界

 ・細胞分裂し尽くして、なくなる機能がでてくる(予備もなくなる)

 ・細胞分裂の回数を増やす必要がある

  →ミューテーションが蓄積してしまう


5. 結論

機能の喪失や癌化の危険性が高まるので容易にアポトーシスを選択することは危険である。

2020年12月1日火曜日

Nature Podcast: Revealed: the impact of noise and light pollution on birds(Coronapod)

担当: 高橋和

参加者: 6名

URL: Revealed: the impact of noise and light pollution on birds

【議論点】
ワクチンの開発期間の長さはウイルスの特徴と関連があるのか

1. 新型コロナウイルスについて
・コロナウイルスの特徴: 
    年齢と基礎疾患が症状の重さに関係している,症状にばらつきがある
・HIVと比べるとゲノムサイズは約3倍大きい(1万:3万)
    →ゲノムサイズと開発期間の長さに関係はない
・ワクチンの開発期間:構想からFDAの認可まで
・ワクチンの開発は通常10~20年なのになぜこんなに早くできるのか

2. 開発の早い要因(ウイルス)
・構造的な要因
・変異率の低さ
・年齢が低いと症状が軽いので,治験がしやすい
・感染の特性(無症状でも拡散する)

3. 開発が早い要因(環境)
・需要に対しての開発競争がある
・(過去と比べて)解析技術の向上

 国からの支援
・規制の緩和
・副作用の賠償責任の減責(JP?)
・治験に対して,13億円程度の補助がある(UK)

4. 開発競争の要因
・期待される利益が大きい
・量が必要なため,2番手以降でも収益が出る
 →対象のウイルスの型が多いため
 →人種によって症状が異なる可能性があるため
・国益
・資金回収のしやすさ
・コマーシャル効果(技術力を比べる機会として)

5. 結論
開発期間とウイルスの特徴の直接的な関係は見られなかったが,環境的な要因でワクチンの開発が従来より早く進められている.








2020年11月24日火曜日

NATURE PODCAST Recoding the E.coli genome

担当:高沢

参加者:6名

【議論点】
コドンを再利用し、機能を追加できたらどのようなメリットデメリットが生じるか

1.コドン削減によって生物に生じる変化
    使用されるtRNAの種類が減る

2.人工的に追加される機能
    アミノ酸の種類を増やして新たなタンパク質をする
    →アミノ酸の合成に関しては遺伝子導入を行うか外部からの供給で補う

3.工業的な面でのメリットとデメリット
    メリット
        ・機能を追加して新たな物質の合成に利用できる
        ・競争能力を調整できる
            →自然界への流出を防いだり、環境を整えて大量に増やしたりすることが可能
    デメリット
        ・自然選択の圧力に弱い可能性がある
         (コドンを減らせるなら、すでに減っているはずである)
        ・増殖が遅い

4.機能を追加した生物視点でのメリットとデメリット
    メリット
        新たな機能にもよるが、一般的な環境におけるメリットは無いと考えられる
      (ただし、コドンの削減だけであれば、合成が速くなると考えられる)
    デメリット
        ・新たなアミノ酸や構造を持ったタンパク質は分解できないかもしれない
            →タンパク質の蓄積などが成長に悪影響を及ぼす可能性がある

5.結論
削減したコドンを利用した、新たなタンパク質の合成は、工業的に大きなメリットとなると考えられる。しかし、追加された生物にとっては、タンパク質を分解できないことなどによって、成長に悪影響が生じる可能性がある。

2020年11月17日火曜日

NATURE PODCAST The ethics of creating consciousness

 担当:小林駿平

参加者:6名

【議論点】
そもそも意識とは何か、一般的な定義と生物学的な定義に乖離が生じた場合どちらを優先すべきか

1.生物学的(専門的)意識の定義
 脳特有の電気的信号が見られるか
 構造、システム(内部)からの定義
 関連する学説
 ・integrated information theory 
  →どうぶつには意識あるがオルガノイドにはない
  ・global workspace theory 
  →前頭葉がないため意識がない

2.一般的、哲学的(非専門的)意識の定義
 自我や心
 第三者視点で見て行動を選択しているか←外からの見え方が重要

3. 一般的定義と生物学的定義に乖離が生じるか
オルガノイド
 専門的→一定の水準に到達できれば意識ある
 一般的→意識を表現する手段がない→意識なし
・植物人間
 専門的→電気的信号が観測された→意識あり
 一般的→意思決定できない→意識なし
・ロボット(AIBO、ペッパー)
 専門的→意識なし
 一般的→感情あるように見える→意識と解釈


4.優先順位
一般的定義優先→大衆に受け入れられやすく、広まりやすい
専門的定義優先→広めるには法律を変えるくらいしないと難しいが、脳死など専門的定義が定着した例もある

5.結論
専門的定義では意識はあるが、一般的では意識のない場合の方が多いと考えられる。また優先順位に関しては、一般的定義が優先されることが多そうである。

細胞の分子生物学 11章 小分子の膜輸送と, 膜の電気的性質

 担当:近藤

参加者:6名

[議題]

輸送体とチャネルのどちらか一方しか存在しなくても問題は生じないか

チャネルは輸送体カから進化したものがある(p604)。そのため、どちらか一方でも生物として成り立つのではないか?


  1. 考えられる事象、教科書に基づく事実
    ・輸送体には受動輸送と能動輸送がある
    ・チャネルには受動輸送のみ
    ・チャネルの方が受動輸送の場合輸送速度が早い(10万倍)
    ・チャネルは外部シグナルを調節できる
  2. 輸送体のみ(良い面)
    ・構造的にシンプル
    ・細胞外に物質を排出したい場合に有利
  3. 輸送体のみ(悪い面)
    ・受動輸送の際、輸送速度が足りない場合がある。輸送速度が重要な機関は脳や神経細胞があり、輸送体のみでは100倍程度足りない。
    ・植物細胞では常に水を大量に細胞内に入れる必要があり、輸送体のみでは難しい。
  4. チャネルのみ(良い面)
    ・能動輸送ができない
  5. 結論
    脳や神経細胞など大きな機関があり、輸送に速度が求められることがある。そのような場合では輸送体のみでは速度に十分に対応できない。また、チャネルのみでは受動輸送ができないため輸送体は必要である。よって、輸送体、チャネルは両方共必要である。

2020年10月27日火曜日

細胞の分子生物学 10章 膜の構造

 担当:髙橋宏

参加者:6名


[議論点]

膜に対するタンパク質の比重が大きいほど機能的に充実しているといえるのか


1.機能的に充実しているとはどういうことなのか

・機能の種類

・機能の効率

・機能の複雑さ



2.タンパク質があまり含まれていない膜の機能

・細胞内と外を分ける

・細胞内を区画化する

・様々な流動性の膜を使い分けられる

・脂肪滴を蓄えられる

・構成によっては悪条件にも耐えうる

・細胞同士の識別過程にも働いている

・細菌毒素やウイルスを受容してしまうこともある

・リン脂質...普通

 糖脂質...+αの機能を持つ



3.タンパク質が含まれる膜の機能

・脂肪滴の切り離しができるようになる

・栄養の受け渡し

・老廃物を出す

・細胞外からの情報の伝達

・強度が増す



4.タンパク質の比重が大きくなる要素

・タンパク質の数の増加

・タンパク質の種類の増加

・重い(大きい)タンパク質の増加

・脂質など(タンパク質以外)の減少

・脂質の密度の減少(表面積が増えたところに結合する)


5.比重が大きくなるとどうなるか
・タンパク質の数の増加→機能効率の上昇
・タンパク質の種類の増加→機能の種類の増加
・大きいタンパク質の増加→複雑なことができるようになる
・脂質の減少→脂質と結合しづらくなる→タンパク質も減ってしまう→機能効率が下がる
・脂質の密度の減少→タンパク質の結合箇所の数は増加しないため変わらない

結論:

タンパク質の数と種類の増加、重いタンパク質の増加はタンパク質の比重が大きくなる主な要素であり、それらは機能充実に繋がっている。

2020年10月20日火曜日

細胞の分子生物学 9章 細胞の可視化

 担当: 高橋和

参加者: 6名

【議論点】
GFPタンパク質のDNA配列を別タンパク質の遺伝子の最初か最後に挿入することで、そのタンパク質が蛍光タンパク質になることは自明なのか

1.考えられる事象,教科書に基づく事実
・緑色蛍光タンパク(GFP): 別タンパク質の遺伝子の最初か最後に挿入することで,発光する(多くの場合,元のタンパク質と同じふるまいをする)
・元のタンパク質とは畳まれ方が異なる可能性→違うものになることが考慮される
・GFPはβストランドが11本(200残基くらいのサイズ)
・GFPは外来であるため,翻訳が遅い→その間に元のタンパク質が構造的に安定する可能性がある

2.元のタンパク質側の問題として考えられること
・似た配列は似た構造をとる
    →同じような構造になるはず
・GFPは小さくはないので,構造的に大きく異なるかも
    →元のタンパク質が大きければ影響は小さい
・GFPがくっつくことによってリガンドが結合できなくなるかもしれない
    (タンパク質間相互作用部位の場合,より影響される)
・N末端,C末端の部位によってGFPが構造の内側に入り込んでしまうと両方機能しなくなる

3.GFP側の問題として考えられること
・GFPが光らなくなる原因
    →変異することによって起こる
    →自己触媒による翻訳後修飾が正常に行われない
・結合する相手によって発光の強さは変わるのか
    →発色団は樽形の内側なので,安定して発光可能

4.結論
タンパク質にGFPを挿入するに際し,構造的な問題が蛍光タンパク質として機能するかと決定していると考えられた.GFPは決して小さくはないタンパク質であるため,元のタンパク質が大きければ安定,そうでなければ不安定な構造をとり,場合によっては本来の機能を失うと考えられる.





2020年10月13日火曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞,分子,生体システムを解析する 6節,9章 細胞の可視化(一部)

 担当:高沢

参加者:6名

【議論点】
確率的な要素をシミュレーションに加える必要はあるのか(細胞ごとのばらつきをモデリングする意味は何か)

1.細胞ごとのばらつき
    細胞分裂の際にタンパク質含量などにばらつきが出る(教科書p523)

2.ばらつきが応答や表現型にどの程度影響するのか
    要素や生物種によって異なる
    (and回路やor回路など回路特性によって変わる可能性もある)
    ex) mRNAの量が倍になると…
    ・人(哺乳類)→細胞システムが壊れる
    ・植物→倍数体になっても生き残る


3.
確率を考慮しなければならない状況
    ・対象のタンパク質の量が少ない
    ・細胞の形状が特殊(神経細胞)→位置に関する仮定が必要
    ・短時間の事象→平均化が難しい
    ・現実で分散が大きい事象

4.現実の細胞におけるばらつきのメリット
    単細胞生物同じ要因で多数の細胞が死滅する可能性を小さくする
    多細胞生物:発生の際などに構造を作り始める目印になる

5.結論
現実の生物には分散の大きい事象が含まれており、正確なシミュレーションのためには、確率的な要素を考慮しなければならないケースが多いと考えられる。

2020年10月6日火曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞の研究法 第4-5節

担当:小林駿平
参加者:6名

【議論点】
変位の優性・劣性は生物内でどのようにして決定されているのか

1.優性劣性はなぜ存在するのか
 発現のしやすさなどが原因で、偶然優劣が存在しているのではないか

2.機能獲得変位がほとんど優性なのはなぜか
 重要な機能を喪失すると生死に関わり、遺伝子が残りにくいため、
 機能喪失が劣勢になっているのではないか

3. 優性劣性が存在しないとどうなってしまうのか

50:50の場合
・多様性が大きくなる
・生命にかかわるようなミューテーションが50%
 →半分しか生き残ることができない(エリートのみ生き残る)

100:0の場合
・種の多様性がなくなる

4.優性劣性が決定されるタイミング
・親から子に遺伝子を受け継ぐとき
 →2つのうち一つが渡される

・遺伝子発現するとき
例:遺伝子型AO(血液型A)の人
(1)Aしか発現しない場合
片方だけ発現させる方法は?
   →Oの発現を阻害する機能をAが持っているのではないか
(2)A,Oともに発現するが、表現型はA
片方だけ表現する方法は?
 →発現スピードを速くし、片方のみ大量に生産する

5.結論
変位の優性・劣性には遺伝子の発現量が関わっており、発現量が多いと優性、少ないと劣性になるとかんがえられる

2020年9月8日火曜日

細胞の分子生物学 8章 細胞の研究法 第1-3節 h.kondo

 担当:近藤輝

参加者:5名

議論点

培養した細胞が変異した際の環境を再現すれば、元となった生物も同様の変異を起こすのか

論点

培養細胞で起きた変異と全く同じ変異は生体内で起きるのか?

またその変異は保存されるのか?

➢ 培養する環境と生体内の環境はどのように異なるのか?

培養細胞とは、組織から単離をした細胞と定義した。

教科書に基づく事実

培養細胞のほうが生体内の環境に比べて均一性が高い。また、齧歯類細胞は、培養中に遺伝的な変異が起こり不死化細胞ができることがある。

培養細胞と生体細胞の環境の違い

それぞれの細胞がおかれている環境の違いについて3つの点から考察した。1つ目は、様々な細胞との相互作用の有無である。生体内の細胞では、周りに様々な種類の細胞が存在するため、他の細胞と相互作用がある。一方で、培養細胞では周りに同じ種類の細胞しかないため相互作用はないと考えた。細胞同士の相互作用によって校正機能が働くため、培養細胞と生体細胞では変異が同じように保存されないと考えた。

2つ目は免疫機関についてである。生体内では免疫機関は存在するが、培養環境では存在しない。そのため、培養環境では増殖ができた細胞でも、免疫機関により保存されない可能性があると考えた。

3つ目はエネルギーの供給についてである。培養環境ではエネルギーは無尽蔵にあると考えるとができるが、生体内では無尽蔵にエネルギーは供給されない。そのため、培養細胞と同様に変異した細胞は増殖しないと考えた。

結論

生体内では、培養細胞と同様の変異が起きても、保存されない。

2020年7月28日火曜日

細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第6-7節

担当:髙橋宏

参加者:6名

[議論点]
RNA干渉を行う非翻訳低分子RNAは1種類でも同様の機能を実現できるか

1.3種類の非翻訳低分子RNAの特徴
・マイクロRNA(miRNA)...標的RNAを切断して分解
・低分子干渉RNA(siRNA)...一本鎖のRNAを作って結合することで阻害
・piwi相互作用RNA(piRNA)...生殖系列で特異的に作られる
    転移因子の移動を阻止する
    他2つより長く、Piwiと複合体を形成する(他はArgonaute)
    本来、正常なmRNAを破壊してしまうが、そうはならない
   →piRNAの構造や製造場所が関係しているかも


2.それぞれの相違点と共通点
相違点
・miRNAは転写の抑制を行わない
・siRNAはRNA干渉を子孫細胞でも続けられる
・piRNAだけ生殖系列で作られる
・piRNAはターゲットを絞っている
・piRNAは最初一本鎖RNA
・ポリメラーゼ3で転写(piRNA)

共通点
・siRNAとpiRNAは、完全なトランスポゾン遺伝子を転写レベルで抑制し、それが作り出したRNAをすべて破壊
・RNA-RNA塩基対形成によって標的分子を見つけ、遺伝子発現を低減
・ポリメラーゼ2で転写(miRNA、siRNA)

3.なぜ1種類ではいけないのか
・3つの役割が違う
  →1つに統合したら危険
・piRNAのみが1本鎖で始まるため、敵味方の識別が難しい
    ↑
  2本鎖RNAを標的にすればいいわけではないから

4.どうすれば実現できるか
・安全な配列と危険な配列を区別
→危険な配列と安全な配列を識別して固定してしまうと変異が行われなくなったり、危険性が高まる

結論:
piRNAのみが1本鎖で始まるため、敵味方の識別が難しく、1種類での運用は難しい

2020年7月14日火曜日

細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第4-5節

担当:高橋和
参加者:6名

[議論点]
なぜゲノム刷り込みは染色体全体ではなく遺伝子ごとに目印をつけるのか

1. ゲノム刷り込みについて
    ・ゲノム刷り込みはDNAのメチル化によって起こる(p407)

        今回,以下の2点について考慮した.
        ・遺伝子ごとに印をつける(発現する/しない)
        ・染色体の一部に印をつける(認識するためだけ)

2. 遺伝子ごとに印をつける場合
    メリット
        印をつけたものがわかりやすい
        発現するものがわかりやすい
    デメリット
        コストがかかる

3. 染色体単位で処理する
    メリット
        印のコストがあまりかからない
    デメリット
        印のあるところまで検索するのが面倒
        父方母方由来かどうかはわかるが,それが発現と直結するかはわからない

4. 刷り込みが何ゆえに存在するのか
    刷り込み現象は有胎盤哺乳類に限られる
        →刷り込みがあることによる多様性
    大きな子孫を残したい雄と大きな胎児を宿したくない雌
        →効率と生存確率の対立

結論:
雄と雌の利害関係が一致しないため,遺伝子ごとのゲノム刷り込みとなったと考えられる

2020年7月7日火曜日

細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第1-3節

担当:高沢
参加者:6名

[議論点]
転写調節因子の単量体が識別する塩基対はなぜ極端に抑えられているのか

1. 転写調節因子について
・6~8塩基対を識別(p375)
・完全一致でなくても結合する(p375)
・二量体になることで偶発的な適合が遥かに少なくなる(p378)

2. 認識配列長が短いことによるメリット
・短いことで参照が速くなる
・短い方が相手の形(DNA構造)の自由度が高く結合しやすい

3. 認識配列長が短いことによるデメリット
・結合の親和性や特異性が低くなる
・複数種類の単量体を作るために遺伝子数が増える
・シス配列の種類を増やすのが大変

4. 単量体の認識配列長を長くすることの問題点
・DNAの構造によっては結合しにくい
・単量体の分子量が大きくなり、合成に必要なエネルギーが増える
・多量体を複数種類作った方が認識の柔軟性が増す
 →シス配列の種類が多く組み合わせの方が効率が良い

結論:
シス配列の種類が多いため、それに適合する大きい単量体を複数用意するよりも、小さい単量体を組み合わせたほうが効率が良いと考えられる。また、シンプルな(短い)認識配列の組み合わせによって環境の変化にも柔軟に対応できる可能性がある。


2020年6月30日火曜日

細胞の分子生物学 6章(後半) DNAゲノム情報の読み取りーDNAからタンパク質へ

担当:小林駿平
参加者:6名

【議論点】
tRNAの遺伝子数がアンチコドンに対して多いことによるメリットは何か

1.ヒトとバクテリアのtRNA遺伝子数とアンチコドン数
ヒト
・アンチコドン : 48種類
・tRNA : およそ500個
 →10倍近い差が存在する
  →同じアンチコドンを持つが、配列の異なるtRNA遺伝子が複数存在する。

バクテリア
・tRNA : 31種類
 →ヒトに比べて少ない 
  →複数のtRNA遺伝子を持つだけの能力がないのかもしれない

2. tRNAの役割
tRNA分子はmRNAのコドンとアミノ酸を結びつける。分子の片側ではアンチコドンによりコドンと相補的な塩基対を形成する。もう一方の側ではアミノアシル合成酵素によりアミノ酸と共有結合を形成する。

3.結論
以下のようなメリット、デメリットがあげられる
【メリット】
・tRNA数には限界があるので、tRNA遺伝子数が多いほどより多くのアミノ酸を結合させることができる
・1部tRNA遺伝子に不具合が生じても同じアンチコドンを持つ他の遺伝子で維持できる
【デメリット】
・tRNAの構造が多様になるため、tRNA合成酵素がtRNAが正しく識別するのが難しくなる

2020年6月23日火曜日

細胞の分子生物学 6章(前半) DNAゲノム情報の読み取りーDNAからタンパク質へ

担当:近藤輝
参加者:6名

[議論点]
なぜ真核生物のRNAポリメタ➖ゼは3種類あるのか?

原核細胞と真核細胞のRNAの生存時間の違い

・原核生物のmRNAの生存時間は5分程度
  もし転写にミスが有ったとしても間違ったタンパク質の合成は5分程度で影響は小さい.
・真核細胞のmRNAの生存時間は原核細胞に比べ長い
  転写ミスのmRNAは長い間、間違ったタンパク質を合成する
    ➢ 原核生物に比べて転写ミスのmRNAの影響は大きい

転写ミスを減らす手段

RNAの品質管理を行うため,RNAの種類ごとにRNAポリメタ➖ゼができたのでは?
真核生物ではRNAの種類により,核外に出るまでのプロセスが異なる場合がある.
異なるRNAポリメタ➖ゼがあれば,RNAの修飾のミスを防ぐことができるのでは?

RNAの種類により合成法が異なる

RNAの種類により合成方法は異なる.
原核生物のように1つのRNAポリメタ➖ゼですべてのRNAを合成することは難しいのでは?

結論

真核生物ではスプライシングなどのRNA合成後もRNAを加工する必要があるため,RNAの分類をする必要がある.更にRNAの寿命が原核生物に比べて長いため,転写ミスの影響が大きい.そのため,RNAの転写ミスを減らす手段の一つとして複数のRNAポリメタ➖ゼが存在すると考えられる.

2020年6月16日火曜日

細胞の分子生物学 5章(後半) DNAの複製、修復、組換え

担当:髙橋宏

参加者:6名

[議論点]
生物によって主要なトランスポゾンが異なるのには理由があるのか

1.なぜヒトは非レトロウイルス型がアクティブなのか
・ウイルスの機構が他2つのタイプと似ている
 →ヒトは密集することが多くウイルスに対する防衛機構を備えたい
  →非レトロウイルス型のみをアクティブに
   →ウイルスが活性しにくくなる
・トランスポターゼが使えなくなっても他のトランスポターゼが使えるから

2.なぜヒトは他2つのタイプがアクティブではないのか
・DNA型は切り貼り式転移機構
 →変異の危険性up
・DNA型は2500~3500万年前まではアクティブ
 →変異する必要がなくなったため非活性化

3.なぜマウスではいまだに非レトロウイルス型以外の2つもアクティブなのか
変異しても問題がないから
ヒトと比べると...
 ・寿命が短い
  →変異の蓄積が少なくいため、それによる死亡率が低い
 ・子供の数が多い
  →何匹かが変異しても種が絶滅するリスクが低い
 ・テロメア―ゼが活性しつづける
  →変異による病気(がんなど)にかからない

結論:
各種のトランスポゾンを調整することで変異の確率を操作しているため、主要なトランスポゾンが種によって異なるのではないかと考えられる。

2020年6月9日火曜日

細胞の分子生物学 5章(前半) DNAの複製、修復、組換え

担当: 高橋和
参加者: 6名

[議論点]
健常な細胞にのみに働くテロメラーゼがあれば、不老を実現できるのか

1. 老化とはどのような状態なのか
・細胞増殖の制御をしている: 加齢の原因と考えられている
・テロメアの長さが短いこと,役に立たない細胞が増える: 腫瘍,変異の可能性

2. テロメアの長さが維持できた場合どうなるのか
・過剰に生成される危険性
→増えたものがマジョリティになり,危険
すべての細胞にテロメラーゼが働く場合
・悪性の細胞が排除されずに増殖する
健常な細胞にのみテロメラーゼが働く場合
・健康維持がしやすい,身体的な加齢を抑えられる
・健常な細胞が大半をしめることでうまく機能させられるのか
        →限界がある(健常なものを阻害する恐れ)

3. 細胞増殖の制御
・老化防止のメカニズムだが,うまくいかないと老化を促進してしまう

4. 複製による問題
・分裂によってがんになる可能性
        →がんは自身で増殖するため避けられない

5. 再生できない細胞
・脳の神経細胞など,再生できない細胞については老化を避けられない

結論:
健常な細胞にのみ働くテロメラーゼがあっても,老化を制御することは困難.
他に老化を制御できる機構がないと不老の実現は難しい.



2020年6月2日火曜日

細胞の分子生物学 4章 DNA,染色体,ゲノム

担当:高沢
参加者:6名

[議論点]
快適な生活環境はヒトの進化を抑制するか促進するか

1. 進化の定義
進化は変化と捉えることができる。

・適応的な変化
 ex)居住地によるメラニン色素の量の変化

・適応的でない変化
 ex)血液型の偏り

適応的な変化を進化として議論した。

2. 適応的な変化を抑制する
・技術の発展により生活環境の自由度が向上
→自ら調整するような機能が発展しない
・適応度によらず子孫を残しやすい
・グローバル化によって、必要な機能が曖昧になる

3. 適応的な変化を促進する
・技術で補える必要のない機能が消える
→機能、エネルギーの効率化
 単純になり繁殖の効率が上がる
・寿命が延びることに伴い、機能が長持ちするように変化するかも
 ・寿命を延ばすことが種の繁栄にメリットになるとは限らない
 (食糧の不足など) 
 ・高齢な個体が存在することによって知識が継承される

4. バリエーションの増加
現在の生活環境によってバリエーションは増加すると考えられる。
・医療等の発展によって不利な遺伝子が維持される
・グローバル化による離れた地域のグループどうしの交配

5. 快適な生活環境について
現在は地域や経済レベルによって快適度が大きく異なる
→多様性につながる可能性がある

結論:
快適な生活環境は、抑制と促進をどちらも生じさせる可能性があり、地域や状況によって抑制と促進のバランスは異なると考えられる。

2020年5月26日火曜日

細胞の分子生物学 3章 タンパク質

担当:大林
参加者:6名

[議論点]
なぜ酵素の多くは汎用性を持たなかったのか
(汎用性が高ければ遺伝子数を少なくできる)

1. 制御の考え方
・酵素の特異性が高い:酵素が反応の詳細を決める
・酵素の特異性が低い:場所が反応の詳細を決める

2. 汎用性が高い酵素の長所
・酵素の種類が減り、シンプルなシステムになる
・機能を相補しやすい
・汎用性が高い方が良い状況
 ・遺伝子の種類を減らす進化圧
 ・遺伝子の種類が多いと遺伝(ゲノムのコピー)のコストが高い
 ・バクテリアで顕著だが、哺乳類以外全般に卵は数で勝負。(哺乳類は少数精鋭方式)

3. 汎用性が高い酵素の短所
・複数の対象にドッキングする必要がある
 ・対象が増えると、タンパク質設計難易度が上がる。
 ・タンパク質のサイズを大きくするのが一案だが、サイズにも制限がある。
・反応の調整
 ・触媒する複数の反応のうち個別に調節できない。
 →量の調節ではなく、修飾で各々の機能を調整する
  →オプションのつけ過ぎは、構造的には不安定になりそう
  →特異性の高い酵素ならば、量と修飾の2重の制御が可能

4. 生存戦略
・特異性が高い → 機能の高度化 →競争に有利
・特異性が低い → 遺伝子数が少ない → 世代時間が短い →競争に有利(Bacteriaなど)
・特異性が低い → 想定外に対応できる? → 天変地異で絶滅しないかも(植物など)

結論:
機能の高度化に特異性を上げる必要があるが、汎用性が有用な側面もあるだろう。

2020年5月19日火曜日

細胞の分子生物学 2章 細胞の化学と生合成

担当:大林
参加者:6名

[議論点]
脂肪の方が貯蔵効率が良いならなぜ全ての糖を脂肪として貯蔵しないのか?

1. 貯蔵効率と貯蔵量(p79)
・(エネルギー)グリコゲン2g = 脂肪1g
・(水を含めた重量)グリコゲン6g = 脂肪1g
・(貯蔵量)・グリコゲン:1日分、脂肪:1ヶ月分

2. 貯蔵場所
・グリコゲン:肝臓・筋肉など(供給先の近く)
・脂肪:脂肪細胞

3. 運搬
・グリコゲンは水を結合している(p79)
・水に溶けやすいので、運搬しやすい
・グルコースしか使えない組織(神経組織)もある。(p87)

4. 分解
・どちらもアセチルCoAに分解される(p81)
・相互変換(p81)
 ・糖→脂肪酸(Easy)
 ・脂肪酸→糖(Difficult)
・分解効率の違いか合成効率の違いか
 ・分解効率が異なる場合
  ・糖分解:Easy
  ・脂肪分解:Difficult →脂肪を落とすダイエットは大変なので、脂肪は分解しにくいと予想

5. エネルギー貯蔵以外の特徴
・グリコゲンの特徴
・脂肪の特徴
 ・断熱材(水の動きを制限する)
 ・安定的に保存できる(消化が大変であることの利点)

結論:
糖の方がエネルギーとして使いやすいので、全て脂肪にはできない。

2020年5月12日火曜日

細胞の分子生物学 1章 細胞とゲノム

担当:大林
参加者:6名

[議論点]
なぜDNAとRNAで1種類だけ塩基が異なるのか

1. DNAとRNAの塩基が異なる理由を考える
・TとUの合成のしやすさに違いがあるのではないか。
 ・合成しやすい化合物は壊しやすい。→大量合成、大量分解が必要なRNA向き。
 ・DNAは壊れにくい方が良い
・情報の流れ:DNA → RNA → タンパク質
 ・タンパク質合成にUの存在が有利な可能性

2. DNAとRNAで1文字だけ異なるのは何故か?
・一文字異なれば、分子として区別するのに十分。
 ・DNAとRNAの区別の必要性
  ・原本(DNA)を保護
  ・役割の違い
・無闇に違いを増やしたくない。
・共通部分が多い方が合成経路が簡潔で良い

3. なぜACGではなく、Tが異なるか?
・部分構造
 ・Tには水素結合に直接関与しない、CH3がある。
 ・CH3の有無で構造の自由度が変わる。
・全体構造
 ・水素結合の数(3 or 2):少ない方が自由度が高い。AかTが良い。
 ・環の数(2 or 1):少ない方が合成がシンプルで、アレンジしやすい。CかTが良い。


2020年1月7日火曜日

細胞の分子生物学 11章 小分子の膜輸送と, 膜の電気的性質

担当:菅野
参加者:6名

[概要]
 生体膜の脂質二重層は極性分子の通過の障壁となるため、内外で濃度差や電位差を作り出すことができる。その調節には輸送体とチャネルが使われている。輸送体は能動的・受動的に小分子を輸送する物がそれぞれ存在する。輸送体の能動輸送ではエネルギーが必要であり、ATPなどを用いて輸送する。一方チャネルは受動的にしか輸送しないが輸送体よりもはるかに効率が良い。チャネルの大半はイオンチャネルで高い選択性がある。

[議論点]
輸送タンパク質からその細胞での機能を推定することはできるか。また、膜タンパクの解析にはどのような難しさがあるか。

小器官に関して機能推定可能かを議論する。

1. 機能の推定は可能か
・輸送タンパクの種類と個数が分かれば、少なくとも入力と出力に関しては推定できる。( f(x) = y )
→ただし、種類が同じでも機能が違う場合推定を誤る。

・内部を見ているわけでないため、内部機構や内部で固有の分子があったとしてもその部分は推定できない。

・1つの小器官に注目しても他との相互作用も含めて考えないと機能が推定できない可能性がある。

この議論の難しいポイント:何がわかったら「機能」と言えるか

2. 膜タンパク質の解析の難しさの影響
・1つに機能を特定できない可能性
・入れ子であるような場合、推定が難しい( f(x) = y → g(y) = z → h(z) = x → f(x) = y → ...)
・細かいレベルで機能を理解しようとするには難しい

[まとめ]
 小器官などの膜で閉じたものの内部構造を知ることはできないが、外部の輸送タンパク質が分かれば大まかに機能を理解することは可能と考えられる。しかし他との相互作用も含めて考えないとわからない可能性がある。また膜タンパク質の解析が難しいことで機能推定は容易ではない。