2019年5月15日水曜日

細胞の分子生物学 4章 DNA, 染色体, ゲノム

担当:川上
参加者:6名

[概要]
 遺伝情報はDNAの塩基配列として記録され、DNAはタンパク質と結合し凝集して染色体に格納される。染色体の部分構造により遺伝子の発現が制御され、この構造はエピジェネティックに継承される。ゲノムは突然変異などで多様化し、種間のゲノム比較により進化の過程や配列と機能の関連が推定される。

[議論点]
多様な性の決定方法がある中で、なぜヒトはX, Y染色体の組み合わせにより性が決定されるのか

 XXYは男性なのか、女性なのか(なぜ性の決定のためにX, Y染色体が用いられるのか)という疑問から発展し、上記のテーマに論点を絞って議論した。

性の決定方法には以下のように様々な形態がある
①成長の途中で一部の個体の性が変わる(一部の魚)
②染色体の組み合わせによって決まる(哺乳類)
③卵の周囲の温度で決まる(爬虫類など)

 これらの決定方法により異なるのは性の比であると考えた。そこで①、②の方法により生ずる性比の偏りと、偏りにより生ずる影響を挙げた。

①の場合
 メスが集団の大部分を占め、集団の一部であるオスが死ぬとメスの一部がオスに性転換する(コブダイ)例がある。この場合、

・メスが多いため、集団として産むことができる子の数は多い
・オス同士の競争による繁殖可能な個体の減少がない
・遺伝的多様性はメスの遺伝的多様性にほぼ依存
・集団として戦力が不足する?

 つまり、集団が多数の子をつくる上では合理的だが、遺伝的多様性には欠けるという影響が考えられる。
 また、魚は卵生でありメスが子宮を持たないという点でメスとオスの構造が類似しており、性転換が比較的容易なのではないかとも考えた。

②の場合
 X, Y染色体の分配により性が決まるため、性比はほぼ1:1である。この場合、

・オスとメスの組み合わせの数が多いので遺伝的多様性が高まる
・オス同士の競争により、その時々に適応した能力を持つオスが選択される
・繁殖できないオスが存在する
・メスが(①と比較して)少ないため集団として産むことができる子の数は比較的少ない

 つまり、子の遺伝的多様性は高まるが、集団がつくることのできる子の数は少なくなるという影響が考えられる。
 また、哺乳類は胎生でありメスが子宮を持つためメスとオスの構造が大きく異なり、性転換が困難である一方で、逆に構造の差を大きくすることができるのではないかとも考えた。

 このように①と②の間には遺伝的多様性と集団がつくる子の数において対称的なメリット・デメリットがあると考えられる。さらに①や②の方法をとる種には卵生、胎生による違いも存在する。

 これらから考えられる結論は以下の通りである。異なる性の決定方法はそれぞれメリット・デメリットを持ち、どのような戦略が有効かは種により異なる。関連する要因としては、性に特有の構造・役割の違い、卵生・胎生の違い、捕食されやすさの違いなどが考えられる。

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