2016年5月1日日曜日

細胞の分子生物学 第6章 ゲノム情報の読み取りーDNAからタンパク質へ 第1~3節

担当:平田
参加者:10名


概要


第1節 DNAからRNAへ

  • DNA上の遺伝子をRNAの塩基配列にコピーすることを転写といい、RNAポリメラーゼによって行われ、これによりmRNAか作られる。
  • 遺伝子領域にはエキソンとイントロンがあり、ともにRNA転写されるがRNAスプライシングによってイントロンが取り除かれる。
  • 上記の過程でうまく加工されたmRNAのみが核膜孔複合体を通って細胞質へ運ばれる。

第2節 RNAからタンパク質へ

  • mRNAの塩基配列は3個ずつ(コドンと呼ぶ)翻訳される。翻訳のためにはアダプター分子が必要であり、これをtRNAと呼ぶ。
  • タンパク質合成はリボソームで行われる。
  • mRNAの翻訳はAUGコドン(開始コドン)に始まり、UAA・UAG・UGAのいずれかの終止コドンで終わる。
  • 合成されたタンパク質はシャペロンにより折りたたまれる。
  • 上記の過程が正しく行われなかった場合に対処する品質管理機能が備わっている。

第3節 RNA世界と生命の起源

  • 今の遺伝情報の発言の仕組みができる前にRNA世界が存在していたのではないかという説がある。
  • 生命には遺伝情報の保存と遺伝的可変性が必要であり、RNA分子には情報の媒体としての機能と触媒としての機能が備わっていることから、生命誕生の主役が自己複製できるRNA分子だったという可能性がある。
  • 周辺のRNAの中に別の形でRNAの生存を助ける反応を触媒するものがあれば、異なるRNA分子からなる集団が別々の働きを専門に担当し、効率よく複製を行う協同的な系へと進化する可能性がある。その後、膜による区画化が起きてRNAの遺伝情報の担体としての本格的な進化が始まったと考えられる。
  • タンパク質の進化について、非翻訳性のタンパク質合成が最初のRNA世界で生じ、そのときの触媒がRNA分子だった可能性がある。すでにRNA世界には特異的にアミノ酸と結合するアダプターが生じていて、それが遺伝暗号の始まりになった可能性がある。
  • RNA世界からDNAを用いるようになったのは、DNA鎖の方がRNA鎖よりも安定なことと、UからTを用いるようになったことによりRNAよりはるかに修飾がしやすくなったからだと考えられる。


議題

DNAに取って代わる遺伝物質は現れるか
(DNAに何の機能を追加すればより良くなるか)

DNA自体の触媒化

  • できることはDNAのみでやれば良いのではないか
  • タンパク質で成し得ないことをDNAやRNAの立体構造により達成できる可能性がないとも言えない

誤り検出・訂正機能


  • これにより遺伝子機能に重要な部分の変異を避けることができる。
  • 変異により不具合が生じた場合は人工物か他人のものに置き変える
  • 親戚のゲノムから誤りは検出することが可能か?

マーキング

  • 例:何世代目かを記す符号
  • 人工のゲノムを扱う際解析がしやすくなる
  • すでにコシヒカリにはゲノムにマーキングがされている
  • ゲノムのハッシュ値等を記しておけば上の誤り検出にも利用できる?

DNAの暗号化

  • ゲノム編集が不可能な領域を作る
  • 転写前に何かのシグナルになるものをかませる
  • G-C含量が変わると不具合が生じることよりコドン自体を変えるのは不可能か?


まとめ


情報系の思考を絵に描いたような、ゲノム情報の暗号化や誤り検出といった話題で盛り上がった。
ゲノムのマーキングについては米の品種の一つであるコシヒカリですでに実現しているというし、誤り検出等も人為的であれば近縁の人間のゲノムから実現できる可能性も考えられた。このように現実的な話題も挙げられた一方、DNAの暗号化については実現した場合の有用性こそは議論できたものの、実現するためのハードルの存在も認識できたと思っている。
しかし、来たるゲノム編集時代に備えてこのような機構を考えておくことは非常に重要であり、さもなければ誰でも好きなゲノムを好きなように改変することが可能な無法地帯へと突入してしまう可能性がないとも言い切れない。そういった意味ではやや妄想的ではあったが有意義な議論ができたと感じた。



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