担当:菅野
参加者:7名
[概要]
生体機能の解明には生化学的解析が必要で、そのために細胞を単離・培養する。多くの動物細胞は老化によって一定回数分裂すると死ぬため不死化する必要がある。こうして得られたものから超遠心機やクロマトグラフィーなどを用いて目的のタンパク質を抽出する。質量分析法や平衡結合実験、X線結晶解析や核磁気共鳴分光法などを用いてその性質や構造を決定できる。
[議論点]
不死化細胞と正常細胞からわかることの違いは何か。
[議論での定義]
ここで言う不死化細胞は不死化した細胞を指すことにする。そのため形質転換細胞株なども含めた形で議論されている。
[不死化細胞と正常細胞の違い]
不死化細胞と正常細胞を比較して議論した。
・増殖能力(分裂し続けられる能力):条件次第で無限 ⇔ 老化による有限
・テロメアの長さ:なくならない ⇔ なくなる
・変異量:多い ⇔ 少ない
・表面の形質:不死化細胞は接着しにくく、他細胞と接着してなくても殖えられる。
[わかることの違い]
ここでは不死化細胞の視点で議論した。
< 増殖能力やテロメアの長さ(老化の有無)による違いから >
・細胞老化の研究はしにくい(老化による時間的スケールが消失しているため)
→ある世代(時間)を固定して殖やすことができれば可能か
・正常細胞とは分裂の性質が変わる可能性がある
< 表面の形質の違いから >
・細胞同士のコミュニケーションに対して研究は難しい
[まとめ]
不死化した細胞は老化という時間的スケールを失うことで無限に増殖可能だが、それによって老化による影響を調べることは難しいだろう。また表面の形質が変わることで、細胞間のコミュニケーションも研究が難しいと考えられる。
2019年11月4日月曜日
2019年10月29日火曜日
細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第6-7節
担当:近藤
参加者:7名
[概要]
これまで、転写開始の制御について扱ってきた。一方で転写後に働く転写後調節も多くの遺伝子に欠かせないものである。これはNRAスプライシング部位の選択といったところから、RNAの編集まで様々な機構を有している。
また、非翻訳RNA (ncRNA) は遺伝暗号の読み取りやタンパク質の合成を行うものもあり、こういったRNAについての研究も進められている。
また、非翻訳RNA (ncRNA) は遺伝暗号の読み取りやタンパク質の合成を行うものもあり、こういったRNAについての研究も進められている。
[議論点]
タンパク質の機能をncRNAが代替することは可能か
[前提 1 ]
人のような複雑な動物では、より複雑な構造をとるためにタンパク質が利用されており、RNAはそれらを作成するためより低いレイヤーで利用されている。
[前提 2 ]
RNAは回転に置いて3方向の自由度をもつが、タンパク質は2方向である。
[前提3]
RNAは配列を認識する(免疫機能)役割を多くもち、自身も分解することができる。
一方、タンパク質はRNAと比較して酵素という働きをすることができ、構造的に相補的な配列を認識することができる。
この他にも分解されやすさや体内での機能ついて議論されたが、ncRNAで代替できるかどうかの踏み込んだ議論を展開することはできなかった。
[まとめ]
RNAとタンパク質の自由度が異なることから、生体内での強度が異なると考えられる。つまり、大きな生物を構成するには現状タンパク質が必須ということになる。一方で、ncRNAでも強固な構造を持つことができることも研究されていおり、まだまだ議論の余地がある。
2019年9月17日火曜日
細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第4-5節
担当:辻本
参加者:7名
[概要]
真核生物は、遺伝子発現を転写調節因子の組み合わせにより調節している。遺伝子発現パターンを細胞に記憶させるため、フィードバックループやDNAのメチル化、クロマチン凝縮状態を付加機構として使っている。
[議論点]
転写回路のモチーフによってどんな機構を持たせられるか。
THE CELLのFig.7-40のモチーフが生物内のどのような働きに利用されているかについて
[概要]
真核生物は、遺伝子発現を転写調節因子の組み合わせにより調節している。遺伝子発現パターンを細胞に記憶させるため、フィードバックループやDNAのメチル化、クロマチン凝縮状態を付加機構として使っている。
[議論点]
転写回路のモチーフによってどんな機構を持たせられるか。
THE CELLのFig.7-40のモチーフが生物内のどのような働きに利用されているかについて
・正のフィードバックループ→増えても困らないもの、ずっと作り続ける(ex.RNAポリメラーゼのように回転率に限界があるもの)
→基本的に細胞などの状態(機能)の記憶に利用されている→アナログで簡単なため、機構のはじめなどに利用されているのではないか。
・負のフィードバックループ→体温調節などまわりの量に応じて対応するものに利用
→0,1ではなく量的なものに対応
・フィードフォワードループ→ローパスフィルターのような作用
高次な信号処理
多細胞生物では、上記のモチーフにより記憶を可能にしている。
また、概日リズムやコウモリの超音波に認識などに利用されているのではないかと考えられる。
[まとめ]
転写回路のモチーフは、生体内の様々な信号処理に利用され、このモチーフの組み合わせによって高次な機能をも可能にしていると考えられる。
2019年7月19日金曜日
細胞の分子生物学 7章 遺伝子発現の調節 第1-3節
担当:川上
参加者:6名
[概要]
多細胞生物の多様な細胞型は同じゲノムから異なる量や質の遺伝子産物が発現することにより実現される.遺伝子産物の発現調節は主に転写の段階で行われ,転写活性化因子,転写抑制因子,クロマチン構造の変化,ゲノム修飾などにより調節される.原核生物より真核生物の方が複雑な調節を行う.
[議論点]
転写調節は活性化因子のみでは行えないのか
転写調節の機構がなぜこのように複雑なのかという疑問から,具体的に簡略化する方法として活性化因子のみで調節を行うことが可能かという点について議論した.
まず活性化因子が結合している場合(ONとする),抑制因子が結合している場合(OFFとする),何も結合していない場合(Neutralとする)で転写量がどれくらい変化するかを見積もった.仮にONの時を100,OFFの時を0(0.01程度)とした.
真核生物の転写調節は活性化/抑制因子の結合によるファインチューニング的な調節以外にも細胞型を左右するクロマチン構造やメチル化による大雑把な調節がされており,Neutralにおける転写量は遺伝子により異なる.今回の議論では簡略化のためそのような大雑把な調節機構がない原核生物における調節を仮定し,Neutralにおける転写量を5程度と見積もった.
具体例としてlacオペロンによる調節を考える.lacオペロンではグルコースが存在下で活性化因子の結合,ラクトース非存在下で抑制因子の結合が起こり,それぞれの環境で以下のような量で転写されると考えられる.
A: glc+ lac+ → 5 (Neutral)
B: glc+ lac- → 0 (OFF)
参加者:6名
[概要]
多細胞生物の多様な細胞型は同じゲノムから異なる量や質の遺伝子産物が発現することにより実現される.遺伝子産物の発現調節は主に転写の段階で行われ,転写活性化因子,転写抑制因子,クロマチン構造の変化,ゲノム修飾などにより調節される.原核生物より真核生物の方が複雑な調節を行う.
[議論点]
転写調節は活性化因子のみでは行えないのか
転写調節の機構がなぜこのように複雑なのかという疑問から,具体的に簡略化する方法として活性化因子のみで調節を行うことが可能かという点について議論した.
まず活性化因子が結合している場合(ONとする),抑制因子が結合している場合(OFFとする),何も結合していない場合(Neutralとする)で転写量がどれくらい変化するかを見積もった.仮にONの時を100,OFFの時を0(0.01程度)とした.
真核生物の転写調節は活性化/抑制因子の結合によるファインチューニング的な調節以外にも細胞型を左右するクロマチン構造やメチル化による大雑把な調節がされており,Neutralにおける転写量は遺伝子により異なる.今回の議論では簡略化のためそのような大雑把な調節機構がない原核生物における調節を仮定し,Neutralにおける転写量を5程度と見積もった.
具体例としてlacオペロンによる調節を考える.lacオペロンではグルコースが存在下で活性化因子の結合,ラクトース非存在下で抑制因子の結合が起こり,それぞれの環境で以下のような量で転写されると考えられる.
A: glc+ lac+ → 5 (Neutral)
B: glc+ lac- → 0 (OFF)
C: glc- lac+ → 100 (ON)
D: glc- lac- → 1 (ONかつOFF,Neutralよりは少ないと仮定)
一方で抑制因子による調節がなくなった場合,以下のように転写量が変化する.
A: glc+ lac+ → 5 (Neutral)
B: glc+ lac- → 5 (Neutral)
一方で抑制因子による調節がなくなった場合,以下のように転写量が変化する.
A: glc+ lac+ → 5 (Neutral)
B: glc+ lac- → 5 (Neutral)
C: glc- lac+ → 100 (ON)
D: glc- lac- → 100 (ON)
最も変化が大きいのは環境Dにおいてラクトースがない環境においても転写を続けてしまうという変化であり,それにより起こりうる影響を以下に示す.
・発現したタンパク質はラクトースが存在する環境になるまでの在庫となる
・発現したタンパク質はやがて分解されてしまうため使われなければ無駄である
・グルコースが存在するようになるまで延々とタンパク質を合成するためコストがかかる
転写抑制がされなかった場合,使われなかったタンパク質が有害になるとは考えにくいが,転写翻訳のためのエネルギー消費により生存に不利になることが考えられる.抑制因子を用いて転写調節を行うためのコストと環境Dにおいて転写が抑制されないことによるコストを比較した.抑制因子は活性化因子に比べ特異性や他の分子との相互作用が少なくて済むため,活性化因子を用いることよりはコストが少ない.一方で環境Dにおいて転写が抑制されなかった場合,ただでさえエネルギー源が少ない環境でエネルギー消費が増大し,適応的とは言えない.そのためこの例については抑制因子を用いることがより多様な環境に適応する上で有利だと考えた.
[まとめ]
以上の議論の結果,活性化因子と抑制因子の両方を用いることでより多様な環境に適応的な応答ができるため,両方を有する調節機能が発達したと考えた.
2019年7月9日火曜日
細胞の分子生物学 6章 ゲノム情報の読み取り 第2,3節
担当:永井
参加者:6名
[概要]
RNAからタンパク質への翻訳は触媒作用を持つ分子装置、リボソームによって行われる。リボソームには大小のサブユニットがあり、小サブユニットがtRNAとmRNAのコドンを対応させ、大サブユニットがアミノ酸間にペプチド結合を形成してポリペプチド鎖を作る。
RNA世界仮説は、かつてはRNAが遺伝情報の媒体であり、化学反応の触媒でもあったとする仮説である。
[議論点]
コドンの対応はなぜ今のようになったか
コドンへの疑問として
・割り当ての数の違い(2~6)
・トリプレットの最後のヌクレオチドは2種で良いのでは?(4x4x2)
・終止コドンはなぜ3つも割り当てられたか
などが挙げられた
それに対してコドンの割り当てが今のようになった要因として
・1文字目は大きさ、2文字目は性質を保存しているのではないか
・ややこしいものとして、終止やトリプトファンなどがまとめられているのでは?
・合成経路でまとめられているのでは?
・誤って生成されても害の少ないものに多く割り当てているのではないか?
などが挙げられた
終止シグナルについて、コドンではなく、TATAなどの配列で表す方法が考えられる
この方法ならば、偶然終止してしまうことを減らせ、フレームシフトにも耐性がある
↓
↓
しかし、偶然終止することが少ないのは一概に良いとは言えない
↓
終止コドンの割り当て数を変えれば、偶然終止することのおきやすさを調整できるのではないか
終止コドンはATリッチ(100%と66%)
↓
GCリッチの太古の生物は重要なアミノ酸をGCリッチのコドンに割り当て、余ったATリッチのコドンに終止などを割り当てたのでは?
GCリッチの太古の生物は重要なアミノ酸をGCリッチのコドンに割り当て、余ったATリッチのコドンに終止などを割り当てたのでは?
[まとめ]
コドンの対応が現在のものになった要因についての議論が盛んに行われた。コドンの冗長性が疑問視されたが、それらは上に挙げられた要因などで説明ができ、可変性があるという点から好ましいものだと考えられる。2019年7月8日月曜日
細胞の分子生物学 6章 ゲノム情報の読み取り 第1節
担当:菅野
参加者:6名
[概要]
DNAの情報は、そこからRNAというものに写し取られて利用される。この作業を転写という。これによってできたRNAはタンパク質の設計図であったり、そのまま物質として機能を持つ。
真核生物では、DNAから写し取られたRNAにマーカーをつけて、いらない部分を取り除くスプライシングという作業を行う。この取り除き方によって、同じDNA配列部分の写しでも複数の最終産物を作ることができる。
真核生物では、DNAから写し取られたRNAにマーカーをつけて、いらない部分を取り除くスプライシングという作業を行う。この取り除き方によって、同じDNA配列部分の写しでも複数の最終産物を作ることができる。
[議論点]
スプライシングの仕方により異なるタンパク質を別々にコードするのに十分な領域があるにも関わらずなぜ別々にコードしないのか
ここでは、原核生物のようなDNAに直接タンパク質の情報を記述する場合(A)と、真核生物のようなイントロンありでRNAにし、スプライシングして利用する場合(B)を対立させて考えていく。
仮定 :
DNAの長さは現在と変わらず、使われていない部分に情報を入れていく。
(A)DNAに直接記述する
+メリット
・スプライシングに関連する情報はいらない。
・核の構造も必要でなくなり、転写と翻訳を同時にできる。
-デメリット
・新しい機能タンパク質を生み出すのが難しい。
・DNAを読む数が多くなる上、それぞれの発現調整も必要。
・1つ1つの変異がダメージになりやすい。
(B)スプライシングを利用する
+メリット
・イントロンがあるため確率的には重要なところにダメージが入りにくい。
・情報容量が大きい。
・バリエーションを比較的容易に増やせる。
・新しい機能タンパク質を生み出しやすい。
-デメリット
・1つのエキソンに変異が入るとそれを用いて作られる複数のタンパクが機能しなくなる。
そもそも少し違う新しいタンパク質を生み出すことは必要なのか。
→ほとんど同じ形だが、活性部位だけ変えたいということがあるとき有用。ただし、場合によっては生体に有害なことを引き起こすものが発生する可能性もある。
DNAの長さは現在と変わらず、使われていない部分に情報を入れていく。
(A)DNAに直接記述する
+メリット
・スプライシングに関連する情報はいらない。
・核の構造も必要でなくなり、転写と翻訳を同時にできる。
-デメリット
・新しい機能タンパク質を生み出すのが難しい。
・DNAを読む数が多くなる上、それぞれの発現調整も必要。
・1つ1つの変異がダメージになりやすい。
(B)スプライシングを利用する
+メリット
・イントロンがあるため確率的には重要なところにダメージが入りにくい。
・情報容量が大きい。
・バリエーションを比較的容易に増やせる。
・新しい機能タンパク質を生み出しやすい。
-デメリット
・1つのエキソンに変異が入るとそれを用いて作られる複数のタンパクが機能しなくなる。
そもそも少し違う新しいタンパク質を生み出すことは必要なのか。
→ほとんど同じ形だが、活性部位だけ変えたいということがあるとき有用。ただし、場合によっては生体に有害なことを引き起こすものが発生する可能性もある。
[まとめ]
DNAに直接タンパク質の情報を記述する場合、DNAからの情報伝達が効率化できるが、それらの管理や新しいタンパク質を生成するのが難しい。一方イントロンありで記述すると、確率的にエクソンに変異は起こりにくいが、一度入ると、その部分は複数のタンパク質生成で使われているために、致命的なダメージになる。また、エキソンの組み合わせでタンパク質を記述されるために、組み合わせは変えられるため、バリエーションを増やすことができる。2019年7月2日火曜日
細胞の分子生物学 第5章(後半) DNAの修復、組み換え
担当:近藤
参加者:6名
[概要]
有害な変異を最小限にとどめるために、生物はDNAの修復機構をもつ。複製の間違いを正すような簡単なものから、放射線で2本のDNAが両方破損した時に修復するようなものまで多くの修復機構をもつ。
一方で、DNAの間を転移することができる因子があり、この因子の働きによって進化に必要なDNAの変化が生み出される。
[議論点]
転移によりゲノムが無駄に長くなることは有害ではないのか
[前提 1 ]
転移は、転移因子によって引き起こされるが、転移先で新たなDNAの鋳型が作られるようになるため、転移を繰り返すことでゲノムは長くなってしまう。[前提 2 ]
今回はDNA配列の長さについて考える( 遺伝子の長さとは区別する )
DNAが長いとどうなりそうか
・(bad) 遺伝子を探すのが大変そう
・(bad) 維持コスト、複製コストが大きくなりそう
・重要ような遺伝子が変異する確率が下がる・(good) 非コード領域で新しい機能が追加される
コストについて
コストについて考えてみると、複製コストはせいぜいnオーダでできるだろうという結論に至った。一方で、維持コストや探すコストについてはその構造がカスケードになっているとそのカスケード分(k)コストが増えてしまう。n^kとなってしまうと、明らかに時間がかかるだろうという結論に至った。
非コード領域で新しい機能が追加される について
・人間の非コード領域は99%である。
・新しい機能が追加され、有害であればその個体が死ぬ。一方で効果的であった場合は広まり集団に広まりやすい。
[まとめ]
一般化することはできないが、非コード領域を多く持つような生物種にとってゲノムが長くなることは問題ではなく、その長さがゆえに転移を許容することができる。また、ゲノムが長くなることによってコストが莫大にかかるようになるため細胞の時間感覚が長くなると考えられ、これが寿命の長さと関係しているのではないかという考察も得ることができた。
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